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74 スイス・スタイルズ I
(H&deMとバ−ゼル近郊の建築[1]──H&deM)

スイスとその周辺に位置するヨーロッパ内陸部では、現在最も勢いのある現代建築群を見ることができる。ローマを中心として発展をしてきた、「ヨ−ロッパ・キリスト教文明圏」にあっては長らく辺境に位置し、権力者の視野の範囲外であったことが幸いし、周辺の大国の影響を適度に受けながら、巨大さや奇抜さ、時代の流行の追求とは対極の方向に発展してきたスイスとその周辺地域の建築的特長を、"スイス・スタイルズ"と称することにする。
スイスは、言語的には大きく3つの地域、宗教的には2つの地域に分けることができる。それらの組合わせと、全国土が山・谷・湖のくりかえしという地形的条件から、大掴みの地政学的には4つの地域──(a)南部のルガ−ノを中心とするローマ・カトリック文化圏のイタリア(ロマンシュ語)語圏、(b)西部のフランスに接するローマ・カトリック文化圏のフランス語圏、(c)東部のオ−ストリアに接するローマ・カトリック文化圏のドイツ語圏、(d)ドイツに接するプロテスタント文化圏のドイツ語圏──に大別することができる。スイスをゆっくりと旅してゆくと、特に文化圏の境界地域にあっては、ひとつの谷を越えるごとに徐々両者が融合し、影響を与えながら遷移していく様をみることができる。現在でも、周囲を囲むEU諸国との間には依然として形式的な国境が存在するが、徐々に変化しながら連続する生活文化の広がりにあってはこの国境という概念が、「日付変更線」のような抽象的存在への変容途上にあることを実感させられる。
紀元前の覇権国家ローマから始まり、仏墺の封建国家の隆盛を経て、20世紀の主役であったドイツまで、隣接する大国から常に影響を受けながら、現代ヨーロッパの中心のひとつとして繁栄を続けるスイスの、周辺諸国の建築的特長を併せ持ちつつ、総体としては独自の魅力を持つに至ったスイス・スタイルズを、時に、突然変異的に現われるスイス的異形の建築も加えて、数回に渡って御紹介したいと考えている。

まずスイス・スタイルズ I では、ライン川交易の中心都市のひとつとして、ドイツ、フランスに跨って発展したバーゼルとその周辺地域の建築を選んだ。化学、精密機械工業立国スイスを象徴する地域であり、最も近代工業社会的(工業国としてのドイツ的)な発展を遂げている地域である。今回は、現代建築の世界的なアイドルとなった感もある、バーゼルに本拠を置くH&deMの作品から見てゆきたい。

次回では、今回のH&deMとバ−ゼル近郊の建築の続編を、さらに引き続き、
○スイス・スタイルズ II(Le Corbusierと仏語圏スイスの建築)
○スイス・スタイルズ III(Mario Botta, Mrio Campiと伊語圏スイスの建築)
○スイス・スタイルズ IV(Peter Zumthorと中西部スイスの建築)
○スイス・スタイルズ V(オーストリアの建築)
を順次見てゆきたいと考えている。



[撮影者:杉丸淳(建築家)]

→ 「公開の原則と著作権について」

pic  フライ・フォト・スタジオ

pic  リコラ社・倉庫

pic  ヘベル・シュトラーゼ集合住宅

pic  ゲーツ・コレクション近代美術ギャラリー

pic  ファッフェンホルツ体育館[1]

pic  ファッフェンホルツ体育館[2]

pic  シュッツェンマット通りのアパートメント・商業ビル

pic  SUVA集合住宅・オフィス

pic  シュヴィッター通りの集合住宅

pic  リコラ・ヨーロッパ社工場・倉庫

pic  アウフ・デム・ヴォルフのシグナル・ボックス

pic  アウフ・デム・ヴォルフの機関車車庫

pic  漫画博物館改修

pic  セントラル・シグナル・タワーNo.2

pic  州立病院ロセッティ医薬研究所[1]

pic  州立病院ロセッティ医薬研究所[2]

pic  キュッパースミューレ美術館改修

pic  ロシュ製薬・リサーチ・センター

pic  リハブ/脊髄・脳損傷患者のためのリハビリテーションセンター[1]

pic  リハブ/脊髄・脳損傷患者のためのリハビリテーションセンター[2]

pic  リハブ/脊髄・脳損傷患者のためのリハビリテーションセンター[3]

pic  バーゼル・セント・ジェオコブ・パークサッカー・スタジアム

pic  ヘルヴェティア・パトリア本社増築

pic  ザンクト・ガレン大学[1]

pic  ザンクト・ガレン大学[2]

pic  シャラウガー・ローレンツ財団[1]

pic  シャラウガー・ローレンツ財団[2]

pic  金華構造--垂直体

pic  エルザッサートールII/バーゼル駅のオフィスビル[1]

pic  エルザッサートールII/バーゼル駅のオフィスビル[2]


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