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191 インドネシア、アロール島の伝統的建築

191 インドネシア、アロール島の伝統的建築

アロールはインドネシアの東ヌサ・トゥンガラ州の県であり、東ティモール共和国の北側に位置している。この県には主な島としてアロール島が、2番目に大きな島としてパンタール島が、そのほかには小さな群島が含まれる。島は乾燥した気候で降雨が少ないため、トウモロコシや現地固有のフルーツなど、ごく限られた種類の作物しか育てることができない。県都はカラバヒで、ほとんどの人々がここに住んでいる。ただし島の内陸部の丘陵地帯では、そのほかの原住民が伝統的な村に暮らしている。

私は2011年、現地の伝統的な家屋と文化について調査し、記録することを目的としたチームの一員としてこの島々を訪れた。われわれが訪れた村は、伝統家屋の形状や性質をもとにそれぞれ選ばれたタクパラ、バンパロラ、ヘランドヒの3つの村である。これらの村の人々、あるいはこの島に定住した部族はアブイ人と呼ばれている。彼らの文化、習慣、ライフスタイルはレゴレゴと呼ばれる舞踏活動を中心に形成されている。

タクパラ村はアロール島の中央北部に位置し、カラバヒの町から公共交通機関でアクセス可能である。ここには"ウマ・ファラ"と呼ばれる16の伝統家屋があり、そのすべてでいまも人が暮らし、持ち主によって維持されている。これらの伝統家屋は高脚台を用いて建てられ、4つのフロアから成る。ひとつ目のフロアは"リクタハ"と呼ばれる広く開放的な公共エリアで、ゲストを迎えたり、会話を交わしたり、あるいは祭事の際に人々が踊りを見物するための空間となる。2つ目のフロアは「家の内部」を意味する"ファラ・ホミ"と呼ばれる住戸のプライベートなエリアに当たり、調理や食事のための暖炉がある。家族は夜、この暖炉を囲んで暖を取りながらこの部屋の一角で眠る。3つ目のフロアは文字通り「食料貯蔵庫」を意味する"アクイ・フォカ"と呼ばれる食料を貯蔵しておくための場所である。すべての収穫物はここに蓄えられ、下にある暖炉から立ち昇ってくる煙で自然に保存される。「頂上」を意味する"アクイ・キディン"と呼ばれる最上階はこの家屋内で最も神聖な場所で、家族の宝物や宗教的な物が保管される。"リクタハ"よりも下に位置する地上階は、鶏や豚などの家畜のための場所である。

バンパロラ村はアロール島の北東部に位置する村である。この村は丘の上に位置しており、近隣の町から徒歩でのみアクセスできる。バンパロラ村の家屋は"ウマ・バロエバン"と呼ばれていて、東西南北の方位が明確に強調されている。各方角はそれぞれ違った意味を持っており、住宅の空間構成に強い影響を与えている。北側は入り口、南側は出口とされ、人々はこのルールに従わなくてはならない。加えて、東側は男性に関連し、西側は女性に関連付けられた空間となっている。さらに、アロール島のそのほかの家屋と対照的に、バンパロラ村のバロエバン家屋はそれぞれが独自の意味を持つ多種多様な彫刻に彩られている。

最後に訪れた村はヘランドヒ村で、パンタール島に位置している。本島からこの島へは木製の船で約1時間かけてバンダ海を渡らなければならず、さらに20分ほどオートバイに乗り、村まで辿りついた。ほかの村とは違い、ヘランドヒ村の家屋は形状に関して言えば単純なものである。ただし、その建設過程において、数多くの複雑な儀式をとり行なわなければならない。建設は"ワタカウィ"、つまり「一緒に食事をとる」ことから始まる。この地域では、すべての村人が一緒に家屋を建てることがいつしか文化となり、家屋の持ち主は食事を提供して皆で一緒に食べ、感謝の気持ちを伝える。このあいだ、村の年長者たちは建物の素材となりそうなものを探しに森を訪れることになる。次の段階は"ガキニウィ"で、すべての村人が集まって作業の割り当てやチーム、そしてその責任について話し合う。"ゲト・カジュフントゥン"とは年長者が最初の木を切り倒し、村へ運び出す時を意味する。"ブヌン・ナラム"は柱や基礎のための最初の穴を掘り始める時を示す言葉である。このあと、4本の主柱が持ち上げられ、東西に差し渡す"バクン・ナ・ラウィ"の儀式が続く。最終段階は、屋根構造を組み立て草葺きを置く"クワテ・セレナ"である。この建設のプロセス全体を通じて食事は家屋の持ち主から提供され、村の女性たちも持ち主と一緒に食事をつくる手伝いをする。

ひとつの県にある3つの異なる村々を見て回ったことは、まさに目が開かれる経験であった。現在われわれが直面している数々の問題に対して、祖先たちが本当に多くの答えを実際に持っていたことに気付いた。彼らはその地の環境に的確に応じるかたちで住居を建て、環境を傷つけたり破壊したりするのではなくこれを理解し、住居と空間を周辺環境と共に成立するようにしているのだ。それこそが暮らしにおける調和の本来の姿であり、都市に住むほとんどの人々が忘れてしまった暮らし方である。


撮影協力
Talisa Dwiyani タリサ・ドィヤニ
Feby Hendola Kaluara フェビ・ヘンドラ・カルアラ
Leta Lestari レタ・レスタリ
Arichi Christika アリチ・クリスティカ
Mikhael Johanes ミカエル・ジョハネス
Harindra Mahutama ハリンドラ・マホゥタマ
Didha Igashi Marindra ディダ・イガシ・マリンドラ



[撮影者:ミルザデリア・デバナスティヤ]

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Photo Archives|五十嵐太郎

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