PHOTO ARCHIVES

189 ジャカルタ・インドネシア

189 ジャカルタ・インドネシア

2016年3月末に、ゼミ旅行でインドネシアを訪れた際の写真である。研究室のインドネシアからの博士課程の留学生・ハリー・カーニアワンの案内の元、ジャカルタとジョグジャカルタに訪問したが、前編のジャカルタ編では、ジャカルタの街並みと、現地の建築家の現代建築の作品を中心に紹介する。
急激な経済発展を続けるインドネシアの首都ジャカルタでは、鉄道インフラの整備の遅れから、朝晩のラッシュ時には猛烈な交通渋滞が発生し、巨大なショッピングモールと昔ながらの住宅街が相対するようなちぐはぐな開発が進行する一方で、ジャカルタ・コタ地区には、オランダ植民地時代の建築がいまなお壊されることなく残る。
そんな慌ただしい都市の状況のなか、インドネシアの建築家たちの主な仕事のフィールドは住宅にある。1998年のスハルト政権崩壊と民主化以降、アンドラ・マーティン、アディ・プルノモ、スタジオ・トントンなど、新しい建築家が登場したが、その歴史はまだ浅い。裕福なクライアントのもと郊外を中心に建てられた彼らの現代的な住宅作品に共通するのは、モダニズムの言語が今もなお生き続けていることだ。特に日陰を利用した涼やかなピロティや植栽の繁茂する屋上庭園は、自然環境との共生のあり方を示唆している。モダニズム建築といえば無装飾、端正、無骨といった印象が強いが、それらは環境条件と切り離された建築単体のイメージにほかならない。生い繁った木々が建築物の輪郭線をかき消し、周辺環境と調和することで、モダニズム建築もあたたかな表情を見せる。また、屋根や壁などいたるところで、遮断されることなく外部と通じて換気がなされ、その隙間から植物が室内に入り込んでくるような、ある意味でのゆるいデザインは、熱帯特有の環境という条件付きではあるが、建築を制約条件から解き放ち、自由な振る舞いを実感させる。
今後、インドネシアの建築家たちが公共建築など大型の建築へとフィールドを広げたとき、どのような展開を見せるかに注目していきたいと思う。後編では、インドネシアの古都ジョグジャカルタを中心に紹介する予定である。



[撮影者:椚座基道+ハリー・カーニアワン(東北大学大学院)]

→ 「公開の原則と著作権について」
このエントリーをはてなブックマークに追加

前の記事:190 ジョグジャカルタ・インドネシア
次の記事:188 カンボジアの近代建築──ヴァン・モリヴァンを中心に
Photo Archives|五十嵐太郎

INFORMATIONRSS

戦後空間シンポジウム03「市民・まちづくり・広場──1960-70年代の革新自治体と都市・建築のレガシー」(港区・6/29)

1960〜70年代にかけて、東京都や横浜市など革新系首長が率いる自治体が全国に登場した。これらは高...

刊行記念イベント「建築のそれからにまつわるArchitects」乾久美子×中山英之(渋谷区・6/3)

乾久美子さん、中山英之さんの建築作品集が、それぞれLIXIL出版とTOTO出版から刊行されます。同じ...

「新しい時代のはじまり」展(神奈川県・4/20-5/6)

「旧神奈川県立近代美術館 鎌倉」が「鎌倉文華館 鶴岡ミュージアム」として生まれ変わります。 鶴岡八...

「ある編集者のユートピア──小野二郎:ウィリアム・モリス、晶文社、高山建築学校」(世田谷区・4/27-6/23)

編集者にしてウィリアム・モリス研究家の小野二郎(1929-1982)が生涯を通して追い求めたテーマ...

連続講義「建築とアーカイブズを巡る論点」(武蔵野市・5/11-)

近年、開催される大規模な建築展も多く、建築や建築に関する資料への関心が高まっているように感じられま...

シンポジウム「日本の近代建築を支えた構造家たち」(新宿区・5/18)

我が国の近現代建築の発展を技術的側面から支えた構造設計手法や施工法などに関する構造資料は、これまで...

「ル・コルビュジエ 絵と家具と」(渋谷区・3/29-5/18)

20世紀に最も影響を与えた建築家、ル・コルビュジエ。建築と都市計画においてのパイオニアであり紛れな...

「わたしはどこにいる? 道標(サイン)をめぐるアートとデザイン」(富山県・3/9-5/19)

「サイン」とは、人を目的地に導く目印のこと。普段意識することは少なくても、駅や空港、商業施設、美術...

「宮本隆司 いまだ見えざるところ」(目黒区・5/14-7/15)

東京都写真美術館では、現在も国内外の美術展などで発表を続ける宮本隆司の個展を開催します。宮本隆司は...

豊田市美術館リニューアル記念イベント「谷口吉生──美術館を語る」(6/15・愛知県)

豊田市美術館のリニューアルを記念して、同美術館を設計した谷口吉生のトークイベントが開催されます。 ...

日本橋高島屋と村野藤吾(中央区・3/5-5/26)

高島屋史料館TOKYOは、1970年に創設した高島屋史料館(大阪)の分館として、重要文化財である日...

NPO建築とアートの道場 2019春レクチャーシリーズ「これからの建築を考える──表現者と建築家による対話実験」(文京区・4/27-)

これからの建築を考えてみたいと思います 確固たるビジョンがあるわけではありません ただ葛藤や矛盾は...

シンポジウム「感性×知性=建築の新たなる可能性を求めて」 (港区・5/7)

21世紀も2020年代が近づき、AI、生命科学、宇宙といった新たなイノベーションが進行し人類のサス...

建築学生ワークショップ出雲2019開催説明会、講演会(東京・5/9、京都・5/16)

2019年夏、古代より現代に受け継がれてきた、わが国を代表する神聖な場所、出雲大社周辺区域にて、小...

杉戸洋「cut and restrain」(港区・3/16-4/13)

杉戸洋による展覧会が「cut and restrain」4月16日まで小山登美夫ギャラリーで開催し...

鏡と天秤─ミクスト・マテリアル・インスタレーション─(中央区・3/12-5/11)

私たちは非日常(ハレ)と日常(ケ)の境界が曖昧な社会におり、個々が非日常(ハレ)と日常(ケ)のバラ...

- Green, Green and Tropical - 木質時代の東南アジア建築展(品川区・2/6-5/6)

建築倉庫ミュージアムでは、2月6日より「- Green, Green and Tropical -...
建築インフォメーション
Twitter Feed
ページTOPヘ戻る