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187 愛知(の知られざる建築)

187 愛知(の知られざる建築)

愛知にはまだ知られていない建築が多く存在する。
今回紹介するのは、同じ愛知県内にあるコルゲートハウスを手掛けた川合健二を彷彿とするような第一線で活躍する建築家とのコラボレーションとさまざまな建築技術の提供を行ない、晩年まで多くの仮設建築物をセルフビルドによって作り続けたM式水耕研究所の村井邦彦(1942-2014)の作品を取り上げる。
M式水耕研究所は村井邦彦を中心に設立され、日本の水耕栽培の歴史をつくり上げたパイオニアと称されている。農業分野、とりわけ水耕栽培での実績が注目されているが建築分野にも大きな関わりを持っており、その契機となったのは1975年沖縄海洋博覧会芙蓉グループパビリオンへの水耕技術の提供である。このパビリオンの設計者は、ル・コルビュジエ最後の弟子とも言われ、レストラン「キャンティ」の内装や大阪万博で富士グループパビリオンを手掛けた日本の空気膜構造の第一人者である村田豊(1917-1988)。この出会いは以後、さまざまな協同作品を通じて互いに影響を及ぼしあうようになる。1976年頃からは網膜式空気膜構造を協同開発してエアドームの普及を図り、1979年にエアドームの施工を行なう株式会社エムを設立。設計を村田豊、施工・営業を村井邦彦を中心とした体制をつくり出す。パビリオンなどの仮設建築物をはじめとし、屋上を覆うエアドームなど数多くの作品を生み出し、《神戸ポートアイランド博覧会芙蓉グループパビリオン》(1981)、《国際蘭博覧会展示会場》(1987)などを完成させることになる。
1982年、神戸で利用した芙蓉グループパビリオンをM式水耕研究所の敷地へ移築するなどして、農業の一大実験場として整備する。機械式立体駐車場の機構を利用したタワー型温室など、まさに農業の最先端実験施設であった。
1988年、村田の死後、バブル経済の崩壊と足並みをそろえるようにM式水耕研究所は経営規模を縮小させていく。一方、村井はセルフビルドを用いて独自にさまざまな仮設建築物をつくり続ける。1995年にはエアドームで桜を覆い、人工的に環境制御を行なうことで真冬に桜を満開にさせるプロジェクト「日本一早く咲く桜」を実現。また、ホームセンターで購入した単管を円形ジョイントでボルト接合した「M式バイオトラス」と呼ばれる構法を用いて、自身のアトリエやパーゴラ、仮設店舗(ポータブルハウス)などをつくり出す。なかでも、病に倒れるまでつくり続けた《A.B.C.センター(アグリ・バイオ・カルチャー・センター)》は、直径20メートルほどの正八角形に10メートル以上の触手が5本伸びた平面形状を持つ巨大トラスドーム建築で、途中何度も修正を行ないながらセルフビルドでつくりあげている途中であった。
2014年6月13日の村井邦彦の永眠後は、経営再建を主題にして御子息が跡を継いでおり、一部は撤去されたものの、移築した《神戸ポートアイランド博覧会芙蓉グループパビリオン》のフレームやエアドームのエントランス回転扉、建設途中の《A.B.C.センター》、仮設店舗などは現在でも残されており、村井邦彦の強い創作意欲を感じることができる。
また、使われなくなったものの村田豊の設計による《村井邦彦邸》(1976)は現在でも残されており、2階居間と3階食堂を結ぶタラップや開口部に設けられた水耕栽培用BOX、寝室の内装に貼られたグリーンのカーペットなど、遊び心に溢れた住宅となっている。

おまけ
この地方では唯一の丹下健三の設計による建築が生まれ変わった。愛知県一宮市(旧尾西市)は戦前から毛織物産業が盛んで、現在でもさまざまな繊維企業が存在する。そのなかのひとつ艶金興業の事務所として建設された《墨会館》(1957)は、個人所有であったため一般見学が困難であったが、昨年公民館として新たなスタートを切った。1階は自由に一般見学が可能で、事前連絡で2階の見学も可能とのこと。また、公民館として公開利用され始めたことで市民からも愛されており、ボランティア有志による案内も行なっている。名古屋や明治村などに来た際には、ぜひ立ち寄っていただきたい建築のひとつだ。



[撮影者:栗本真壱(建築家)]

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pic  村田豊+村井邦彦《神戸ポートアイランド博覧会芙蓉グループパビリオン》(M式水耕研究所へ一部移設) [1]

pic  村田豊+村井邦彦《神戸ポートアイランド博覧会芙蓉グループパビリオン》(M式水耕研究所へ一部移設) [2]

pic  村井邦彦(セルフビルド)《アグリ・バイオ・カルチャー・センター(A.B.C.センター)》 [1]

pic  村井邦彦(セルフビルド)《アグリ・バイオ・カルチャー・センター(A.B.C.センター)》 [2]

pic  村井邦彦(セルフビルド)《M式水耕栽培研究所、ポータブルハウス》

pic  村井邦彦(セルフビルド)《M式水耕栽培研究所、アトリ 絵・夢・来》

pic  村田豊+村井邦彦《M式水耕研究所》

pic  村井邦彦《M式水耕研究所》

pic  村井邦彦《M式水耕栽培研究所、タワー型栽培施設》

pic  村井邦彦《Mエアドームシステム》

pic  村田豊《村井邦彦邸》 [1]

pic  村田豊《村井邦彦邸》 [2]

pic  丹下健三《墨会館(現・小信中島公民館)》 [1]

pic  丹下健三《墨会館(現・小信中島公民館)》 [2]

pic  丹下健三《墨会館(現・小信中島公民館)》 [3]

pic  丹下健三《墨会館(現・小信中島公民館)》 [4]

pic  丹下健三《墨会館(現・小信中島公民館)》 [5]

pic  丹下健三《墨会館(現・小信中島公民館)》 [6]

pic  丹下健三《墨会館(現・小信中島公民館)》 [7]

pic  丹下健三《墨会館(現・小信中島公民館)》 [8]

 


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