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163 九州
九州には数多くの近現代建築の名品が現存しているが、なかでも特筆すべきは大分出身の建築家、磯崎新によって1960年代から70年代にかけて設計されたおもに鉄筋コンクリート造の建築群であろう。磯崎の実質的な処女作である《大分県医師会館》(1960)のほか、《福岡シティ銀行大分支店》(1966)、《秀巧社ビル》(1975)など、すでに解体されてしまった作品もあるが、それでも福岡、大分を中心にかなりの数の建築が現在も使用されており、知的な構成力に裏打ちされた建築はいま見ても新鮮である。また、同じく九州の久留米出身の建築家、菊竹清訓の作品では、メタボリズムの思想を具現化した作品と評される《都城市民会館》(1966)、久留米では初期の小品《徳雲寺納骨堂》(1965)を見ることができる。ほかにも九州では白井晟一による《親和銀行 大波止支店》(1963)、《親和銀行本店》(1967)、丹下健三による《日南市文化センター》(1962)、槇文彦による《岩崎美術館・工芸館》(1978, 87)、《風の丘葬祭場》(1997)、伊東豊雄による《八代市立博物館・未来の森ミュージアム》(1991)、《アイランドシティ中央公園中核施設ぐりんぐりん》(2005)など現代の巨匠の代表作品を多数見ることができるほか、1988年に始まった「くまもとアートポリス」事業により、熊本では多くの現代建築家による建築が現在進行形で生み出され続けている。また九州は、熊本城、軍艦島、日本二十六聖人殉教地といった歴史的な遺跡にも事欠かない。2週間の旅行で要所をすべてフォローすることができたとはとても言えないが、膨大な建築を短期間に集中して巡る経験は、自分の建築観に少なからず影響を与える刺激的なものであった。本稿が、同じ動機を持つ人の行動の一助となれば幸いである。
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Photo Archives|五十嵐太郎
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2019-02-20
