パタン・ランゲージの今日的意義
──新たなコラボレーションのかたち

藤村龍至(建築家/東洋大学理工学部建築学科専任講師)
井庭崇(慶應義塾大学総合政策学部准教授)
難波和彦(建築家)

イントロダクション:趣旨説明(藤村龍至)


藤村──『プロトタイピング──模型とつぶやき』(LIXIL出版、2014)は設計の際にプロトタイプとして各段階で作成されたプロセス模型の写真を時系列順に並べ、その下に「つぶやき」と呼んでいる1行くらいの文章を書いています。模型を見て現在の段階を要約し、それをもとに形態の特徴を抽出し、そこで発見したことを言語で表現してフィードバックする──。そのプロセスをつぶやきの連続で再現して、建築をつくる経験を読者が追体験できるような意図です。デザインをどう記録するかを検討することで「批判的工学主義」という考え方をデザイン・プロセス論へと展開させたものといってもいいでしょう。
この本の最後では集団設計の事例(工藤和美+藤村龍至/東洋大学ソーシャルデザインスタジオ《鶴ヶ島太陽光発電所・環境教育施設》)へと展開しており、その先に井庭さんのおっしゃっている「創造社会」への展開を予見しています。


『プロトタイピング』(LIXIL出版、2014)表紙

同、8-9頁

同、130-131頁

本日のテーマは「パタン・ランゲージの今日的意義」です。はじめに背景を説明しておきましょう。『パターン・ランゲージ──創造的な未来をつくるための言語』(慶應義塾大学出版会、2013)のなかで、井庭さんと中埜博さんのあいだで日本のクリストファー・アレグザンダー受容にはおもに三つの段階があるという議論がありました。
ひとつ目はコンピュータを活用した設計という側面でおもに1970年の大阪万博のときにアレグザンダーが招聘されたころです。当時、日本の建築家はコンピュータの利用に関心を向けていました。第二段階は1985年前後で、《盈進学園東野高等学校》にアレグザンダーが参加したころです。参加型まちづくりのモデルとしてパタン・ランゲージが参照されました。そして、いまが第三段階ではないかということでした。
一方で、井庭さんはパタン・ランゲージの対象を、1.0=物理的なもの、2.0=ソフトウェアなどの非物理的なもの、3.0=人間行為──たとえば学びやプレゼンテーションやコラボレーション──と捉えています。
そのうえで私の試みを振り返ると、「超線形設計プロセス」と呼んでいる設計手法はソフトウェア設計の世界における「アジャイル開発」や「反復型開発」に近いと言われることがあるように、井庭さんの言葉を借りれば、2.0を経て、1.0を再定義するようなやり方といえます。さらに、設計教育の場面でも応用しているので3.0の側面もあります。ワークショップを経て投票行為を繰り返しながら複数の案をひとつの統合案にまとめる方法は1.0から3.0までを統合していると説明できそうです。
そこで今日は『プロトタイピング』で示した私の設計手法と井庭さんの目指す「創造社会」をアレグザンダーの解釈を介して繋いでみようと考えています。


201503

特集 再考・集団設計の思想
──集合的クリエイションの実践とその源流


パタン・ランゲージの今日的意義──新たなコラボレーションのかたち
インサイド/アウトサイド──レファレンスから《Dragon Court Village》へ
生成力を設計せよ──1968年のC・アレグザンダーへ
サステイナブルな芸術の共同体──山口文象ノンポリ説からみたRIAの原点
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