岩手県上閉伊郡大槌町 2018/2011

淺川敏(写真家)

被災地を始めて訪れたのは2011年5月1日、夜明け前の南三陸町だった。その後釜石まで各地を周り再び南三陸町に戻り志津川を撮影。まだ宿泊できるところはもちろんなく、いったん内陸に行き1泊、翌朝より石巻から女川まで行き東京に戻ってきた。想像以上の現実の光景に言葉は失せていった。震災以降災害時の連絡ツールにもなると思いTwitterを利用するようになっていた。アカウントはその以前からもっていたのだが日常的に利用し出したのはこの頃から、そんなTwitterを眺めているとアジア行脚の盟友村松伸さんも同じ時期に岩手にいるようだった。1カ月後、村松研が大槌の調査に行くが一緒に来ないかとのお誘いを受け同行した。そして初めての大槌入り。5月に初めて被災地に行ったときは、いつも都市を撮っている冷静な目で見つめたいと思い、メインは4×5のカメラでモノクロームのフィルム、サブにデジカメ、それとチェキ、そんな道具立てだった。4×5のカメラでモノクロームのフィルムではもっていくフィルムの量に制限があり、多くの場所を撮るには不向きと思い、この時よりデジカメメインで撮影が始まる。
写真には、伝達、記録、表現手段、いろいろな役割がある。それまで僕の撮った写真の存在は、僕の存在がなくなってからほんの少し先まで残っていればいいと漠然と思っていた。被災地の写真を撮りながら思ったことは、100年、500年先までこの記録は残しておくべきだと痛切に感じるようになったことだ。記録することと、それを残すことの大切さを感じながらの撮影となった。
撮影が終わり東京に戻りRAW現像をする。その後すべての写真一枚一枚にカメラに着いたゴミなどがないか100-200%に拡大して上から順にくまなくチェックするのが常。もちろんこの作業、スタッフにやってもらうことが多いのだが今回は自分でせっせと作業する。大槌の町の先に広がる山の稜線、6月のやや霧に包まれたその景色はじつに美しい、そんな自然の景色にうっとりとしているのは作業中の画面の上から1/3にも満たないときまでで、その先には被災してしまった現実が待っている。目頭が熱くなりながらその状況を直視する。あれから7年。その変化は早かったのか遅かったのか、泥の中にわずかに残った線路と駅が建っていたところには新たな線路と駅が姿を現わした。少しずつだが住宅も建ち始めている。しかし巨大な防潮堤はまだまだ建設中。いつになったら終わりになるのかは皆目わからない。その変化を記録する、そこに何かを訴えようとする意思はない、ただ都市ができていく過程を記録するのみ。何気ない日常に包まれた、退屈な田舎町に戻るまで記録は続く。どんなに町になったとしても、そのフレームの上の景色だけは何百年と変わらなく、美しい表情を見せてくれることを知っているから。

01  2018.01.27 吉里吉里[クリックで拡大]

02  2018.01.28 町方[クリックで拡大]

03  2018.01.28 町方[クリックで拡大]

04  2018.01.28 町方[クリックで拡大]

05  2018.01.28 町方[クリックで拡大]

06  2018.01.28 安渡[クリックで拡大]

07  2018.01.28 赤浜[クリックで拡大]

08  2018.01.28 町方[クリックで拡大]

09  2018.01.28 小枕[クリックで拡大]

10  2018.01.28 町方[クリックで拡大]

11  2018.01.28 町方[クリックで拡大]

12  2011.06.11 町方[クリックで拡大]

13  2011.06.11 町方[クリックで拡大]

14  2011.06.13 赤浜[クリックで拡大]

15  2011.06.13 港町[クリックで拡大]

16  2011.06.11 町方[クリックで拡大]

17  2011.06.11 町方[クリックで拡大]

淺川敏(あさかわ・さとし)
1959年生まれ。写真家。ZOOM共同主宰。主な共著書=『アジアン・スタイル──17人のアジア建築家たち』(筑摩書房、1997)、『アジア建築研究──トランスアーキテクチャー/トランスアーバニズム(LIXIL出版、1999)、「図説 北京──三千年の悠久都市」(河出書房新社、1999)、『北京論──10の都市文化案内』(丸善、2008)など。


201803

特集 復興からの創造


復興からの創造はいかに可能か
創造的復興のジャッジ
復興を生かす力──インドネシアの津波被災地に学ぶ
岩手県上閉伊郡大槌町 2018/2011
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