【第1回】[連載にあたって]建築やアートでは限りがある

太田浩史(建築家)
まずはごく普通に、都市の話をしてみたいと思う。いろいろなプロジェクトの噂話、世界の都市の歴史と未来、フェスティバルとアートプロジェクト、それからどんな建築が、どんな都市空間をつくっているか、などなど。建築の世界に建築を語る文化があるように、都市についての語り口があると思うのだけれども、こと日本においては、まだまだ都市の話が足りないと思うのだ。あのまちの水辺が良いですね、とか、この前見たアーケードの屋根の納まりがこうなっていた、とか、そんな話をベースとしてみたい、と思う。

なぜならば、私たちは都市の荒廃について、いよいよ無関心ではいられなくなっていると思うからだ。錆び付き、無惨な姿をさらすアーケードについて、シャッター街すらも成立せず、建物が壊されて歯抜けになった商店街について、何か抜本的に考えを変えないと、私たち自身のまちの未来はいつまでも現われてはこない。リノベーションの試みや、アートでの活性化など、都市の衰退についてはさまざまな対応がなされてきたけれど、はっきりしたのは「建築やアートでできることには限りがある」ということなのだ。街路について、広場について、港や河川について、それらを引っ括めた都市の構造について、もっともっと全的に捉え、そのなかで私たちができることを捉え直す必要がある。もう少し精確に言うと、建築家が持っている、問題の空間的把握、構想力とプレゼンテーションの能力、寸法とディテールについての情熱、つまるところ私たちのデザインの力を、眼前の泣けてくるような風景に即して整え直すべきだと思うのだ。

それだから、「まちデザイン」という、等身大で、ありふれた課題の広がりを、乾さんとの対話を通して見渡してみたいと考えている。私たちのまちを、いったい誰がデザインしているのか(もしくはデザインしていないのか)。駅は、道は、港はどのようにつくられているのか。それを知り、情報として束ね、日本の今の状況に必要な都市論=アーバニズムを築いてみたい。なるべく多くの現場を訪ね、そこで踏ん張る人の話を聞き、職能の連携の可能性も探ってみたい。


※「新しい『まちデザイン』を考える」は隔月で連載を行ないます。

201108

連載 Think about New "Urban Design"

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