【第1回】[連載にあたって]建築家、まちへ出る

乾久美子(建築家)
私はいわゆる意匠系で、建築単体をどのようにつくるかについて考えを巡らせる日々が続いていたのですが、延岡駅周辺整備デザイン監修者プロポーザルで選定いただいてから、大きく自分の建築観を変えざるをえない生活を送っております。つい最近までまちづくりには興味あるけれどなかなか立ち入りすることが難しいなあと思っていたのが、今や毎日のように延岡市の方々から電話がかかってきて、中活★1の認定がウンヌン、交通計画はどうしようなどという会話に必死でついていっているわけです。不思議なものです。

そんな身になったために、自分の設計態度について反省せざるをえなくなってしまいました。これまでも狭い範囲のデザインのことばかりを考えていたわけではなくて、それなりに真剣にまわりの風景やコンテクストのことを考えて設計してきたわけですが、その視線がまだまだであったことが痛いようにわかるからです。例えばこれまでの自分といえば、コンテクストを凝視するのだけど、敷地境界線から一歩も出ようとしないような感じなのです。本人はいたって真剣なのだけど、ハタからみると滑稽なわけですね。もちろんこうした設計態度に無意識だったわけではなく、そのなかに諧謔性を見出すことすらしていた私ですので、そこまで深くショックを受けたわけではありません。しかしその諧謔の行き先がちょっと閉じていたというか、不健康だったのかもなあと感じるようになりました。これをひとりの建築家の退行とみるのか、発展とみるのか、その辺りは気になるところですが、まあ長い目でみていけばいいと思っています。

都市のこと、まちのことを考えるためにはさまざまな視点をもつ必要があって、私は今、その仕入れに必死です(笑)。そんな中、「太田さんと一緒にいろいろ見たり聞いたりしにいきませんか」とお声がかかりました。太田さんといえば建築も都市も語れる御仁。願ってもないチャンスと飛びあがらんばかりに喜びましたが、次の瞬間、「まてよ、私は太田さんと会話するためのコトバをもっていないではないか」と不安になりました。そこで、のび太くんのようにドラえもんについていくような感じの企画なのであれば可能であると申し上げました。のび太くんの立場であればドラえもんたる太田さんの無限のポケットからでてくるアイテムを「うわあ」と驚くのが身の上ですから、気軽に参加できるというわけです。最近かけている丸眼鏡がたまたまのび太くんっぽいという変な一致もありますし、ポジションのあり方としてはよいのではないかと感じています。もちろん本物のび太くんのように、いつまでたっても学習しないままではいけません。小さなドラえもんになるべく頑張ってついていくつもりです。


★1──中心市街地活性化法




※「新しい『まちデザイン』を考える」は隔月で連載を行ないます。

201108

連載 Think about New "Urban Design"

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──まちはデザインで変わる
【第4回】[特別寄稿]富山市の都市特性と都心地区の活性化概要 【第4回】[特別寄稿]まちなかの超一等地を「広場」にする
──アイがうまれるグランドプラザ
【第4回】[訪問後記]富山の都市再生から建築を考える【第4回】[訪問後記]オーラを放つまちデザイン【第3回】[インタヴューを終えて]まちデザインを連歌のように【第3回】[インタヴューを終えて]あらためて歩行者空間を思う【第3回】[インタヴュー解題]ヨーロッパのアーバンデザインの歩み【第3回】[インタヴュー]新しい「まちデザイン」を考える 3──ヨーロッパの都市デザイン20年史【第2回】[インタヴュー]新しい「まちデザイン」を考えるための、アーバンデザイン20年史【第2回】[インタヴュー解題]第2世代の「アーバンデザイン」【第2回】[インタヴューを終えて]アーバンデザインの青春と私たち【第2回】[インタヴューを終えて]都市居住なくして都市の繁栄はない、のかも【第1回】[連載にあたって]建築やアートでは限りがある【第1回】[連載にあたって]建築家、まちへ出る【第1回】[対談]新しい「まちデザイン」を考える
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