伊藤博之建築設計事務所+O.F.D.A.《経堂の住宅》
東京都世田谷区経堂
専用住宅
伊藤博之建築設計事務所+O.F.D.A.(伊藤博之、渡辺聡子)
佐藤淳構造設計事務所 (担当 佐藤淳)
渡邊技建株式会社
木造
地上2階
5.167メートル(最高高さ6.137メートル)
141.46平方メートル
75.22平方メートル
117.85平方メートル
1階:67.93平方メートル
2階:49.92平方メートル
敷地は、緑道に近い閑静な住宅街である。既存母屋を取り囲むL型の庭に、子供世帯のための家を計画することを依頼された。L型の庭の2つの腕の部分が、それぞれ母屋の玄関および座敷に面し、手入れの行き届いた庭になっていたため、これらをできる限り残すよう、新築建物はL型の関節部分に配置することになった。
この位置の上方からは、道路の反対側の緑道への視線の抜けも期待されたため、建物は、2つの庭と緑道の3方へ向けて外部へ開く、少しゆがんだ六角形の平面となっている。
敷地が整形でない上に、母屋の一部が突出しており、さらには、既存の樹木を最大限残すことにしたため、歪な平面形が大量に検討され、その多くが樹木や母屋そして境界線に押されたような凹みのある形態であった。しかし、将来、母屋が建て替えられたり、敷地が分筆される可能性も鑑みると、流動的な周辺環境の中であまりに他律的な建物は不適切であるように思えた。そのため、外部への接点としての3つのファサードをもち、それらが、内部からの要請と周辺との関係において大きさが調整されるような、柔軟で適度な自律性をもつシステムとして6角形を採用したつもりである。例えば母屋の座敷庭に面するファサードは座敷からの風景をできるだけ変えないよう、その位置と高さが検討されている。
六角形の中に2間四方の部屋が3つ収められており、それらは天井高や仕上で緩く分節されている。そのうちの2つ、和室とリビングは庭に面しているが、中央のダイニングからは和室やリビングを通して庭を見ることになる。庭を直接見る視線だけでなく、自らの育った見慣れた環境としての庭が、新しい生活の美しい背景となるような視点を織り込むことを意図している。
伊藤博之(建築家)