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特集:201401 2013-2014年の都市・建築・言葉 アンケート<

小原真史

小原真史 ●A1
北村優季著『平城京成立史論』(吉川弘文館、2013)
日本の古代史は畿内史とニアイコールとなっていることは言うまでもないが、北村優季の『平城京成立史論』はその畿内に出現した古代都市がいかに成立し、展開していったのかを史料を駆使しながら辿る労作となっている。唐の都との比較の中で畿内の豪族たちが天皇のもとに再編されていく過程やさまざまな生業を営む住人たちの姿などが生き生きと描き出され、政治と文化の結節点としての古代都市の実像に迫っている。

北村優季著『平城京成立史論』


●A2
「増山たづ子 すべて写真になる日まで」展(IZU PHOTO MUSEUM、静岡)
毎年のように紹介してきた気がするが、ようやく開催することができた。ダムに沈みゆく故郷の村を撮影し続けたカメラばあちゃん・増山たづ子の展覧会だ。IZU PHOTO MUSEUMの開館以来ずっと開催したいと思っていた。手前味噌になってしまうが震災以降、最も重要な展覧会のひとつになったと思う。国による公共事業の問題だけでなく、過疎地と都市部の関係、戦争の記憶、故郷や共同体についてなど観者によってさまざまな読み取り方ができるはずだ。ぜひ観にきてほしい。1月19日と2月9日にトークイベントも予定している。

増山たづ子「すべて写真になる日まで」
会場:IZU PHOTO MUSEUM[http://www.izuphoto-museum.jp/index.html
会期:2013年10月6日(日)〜 2014年3月2日(日)

大西暢夫《徳山小学校校門跡の増山たづ子》(1996)

増山たづ子《櫨原分校》(1983)


●A3
紀元2600(1940)年記念のオリンピックと万博は関東大震災からの復興する帝都東京のアピールと経済振興を掲げて1930年代から招致活動が行なわれたが、日中戦争の激化と国際的な孤立、財政難などによって日本は開催権を返上し、明治以来の宿願だった万博とオリンピックの開催は戦後にまで持ち越されることになる。東日本大震災後に招致活動のアクセルが踏まれた2020年のオリンピックは、まるで1940年に開催されるはずだった「幻の東京オリンピック」の亡霊が現在に甦ったようにも思える。安倍政権は戦争のできる国へと急激に舵を切っているから、歴史が繰り返される可能性もゼロではない。
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