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特集:201201 2011-2012年の都市・建築・言葉 アンケート<

城一裕

●A1+A2

震災直後の3月13日早朝、新幹線に乗って妻と子どもと共に佐賀にある弟の家に避難しました。東海村JCO臨界事故の隣町で育ち、市民運動を趣味とする母を持った私にとって、小さい頃から身近であった放射線に対する、なかばトラウマ的な恐怖を感じてのことでした。3月中はちょうど春休みだったこともあり、九州から事態を見守っていましたが、4月に入り新学期のため東京に単身で戻ってきました。その時点から、自分はなにがしたいのだろうと自問する日々が続いています。明確な答えはいまになっても出ていませんが、そのなかで印象に残ったいくつかの実践について以下に記します。

大友良英『クロニクルFUKUSHUMA』

現在、毎回ゲストをお呼びして音楽と美術の学生と共にお話を聴くという講義(芸術情報特論)を担当しています。この春、当初予定していた研究者の来日がキャンセルとなり、どなたを招くか考えあぐねていたところで目に止まったのが、大友良英さんのtweetでした。細かな内容を記憶してはいませんが、その悩まれている様を含め、ぜひ若い学生に話していただきたいと思い、お願いした講演が本書籍の第一章として収録されている「文化の役目について──震災と福島の人災を受けて」です。

三輪眞弘「電気エネルギーはすでにわれわれの身体の一部である──中部電力芸術宣言について」

同じく、どなたをお呼びするかと考えていたなかで、「これは」と思ったのが、作曲家・三輪眞弘さんの書かれた「中部電力芸術宣言」でした。2009年の発表後、改訂を経て震災直後の3/13に再公開されたこちらの宣言では、現在の芸術、そのなかでも特に装置をともなう音楽において電気の支配から逃れることは難しい、そのことを自覚したうえで電力芸術を実践すると述べられています。

千房けん輔《地震前後ツイート》★1

ネットアーティストexonemoの一員としても活躍する、千房けん輔さんの手によるこの作品では、任意のTwitter IDを入力することで、3月11日に記されたさまざまな人の発言を表示、確認することができます。地震以降のものだけでなくその直前五つのtweetを併記することで、そのユーザの人となりが垣間見えるような気にさせられる秀逸なアーカイブとなっています。

大友良英『クロニクルFUKUSHUMA』(青土社、2011)
三輪眞弘「電気エネルギーはすでにわれわれの身体の一部である──中部電力芸術宣言について」(『アルテス』Vol .01 2011 WINTER[特集〈3.11と音楽〉、アルテスパブリッシング、2011)

★1──http://sembo.jp/zengo/

●A3

「hARTsuden 発電するアート」(大城真、管野創、堀尾寛太、芝辻ペラン・ステファン、矢代諭史)

先述の大友良英さんらが関わった「8.15世界同時多発フェスティバルFUKUSHIMA!」(福島)を始めとして「アトミックサイト」(現代美術製作所)、「東京藝術発電所」(東京藝術大学)など、原子力発電の抱える問題に関連したイベントが、震災以降さまざまなかたちで行なわれています。執筆現在(2012年1月10日)行なわれているこの展覧会では、若手を中心とした作家が発電に向き合い、光る、動かす、作る、動かされる、といった作品を展示しています。そのなかでも、滑車や振り子といった機構と家屋そのものとを活用した音響作品を展示している堀尾寛太さんの「電気を使わない作品が作れた」という言葉は、今後作り手が電気とどう付き合うかという点において示唆に富むものだと思います。

hARTsuden 発電するアート(アーティスト・ラン・スペース「merdre」、2012年1月7日〜15日)
URL=http://uma-merdre.com/blog/2011/12/18/hartsuden/

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