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特集:201201 2011-2012年の都市・建築・言葉 アンケート<

市川創太

●A1
震災直後からの、ボランティア、耐震診断調査、東北地方の大学、研究機関、被災地内外の建築家たちによる一連の復興プロジェクト、激励アートプロジェクト、イヴェント、それらの全てに敬意を表します。

復興に関しては、現時点でも足りていない最低限の整備は急務でしょう。まずはそれを乗り越え、おのおの実力発揮して結果的に多様性がでてくるような建設が行なわれてほしいです。日本ならでは、東北ならではの創造的な景色、震災前よりも豊かになるような復興はいかにあるべきか、考えていかなければなりませんね。

建築が解決できること、解決しなければならないことは山積していますが、エネルギーに対する意識や体制について、より一層の決心と行動が必要に思えます。震災以前からエネルギーについては、さまざまな注目すべき技術開発研究が進行はしていましたし、世界中で関心の持たれていることでした。中国のグリーン産業、再生エネルギーへの注力をみてもそれは明らかでしょう。日本では、科学的な観点よりも、政治的、利権的パワーバランスで物事が進められてきたようです。わかっていはいたけれど、それがこのタイミングで一層露呈しましたね。

新しいエネルギーを研究開発する産業を立ち上げ、雇用創出し、従事者はプライドを持って健康に働くことができる。開発の成果は日本の地形、気候独特のものになるかもしれないし、世界に貢献できるユニヴァーサルなものかもしれない。簡単にはいかないかもしれませんが、まずはシンプルにそのような体制づくりを。これは日本だけでなく、世界中どこにでも共通することで、dNAのヨーロッパのメンバーも同じ意見です。

●A2
森美術館「メタボリズムの未来都市」展は豊かな資料群と、現在の技術を使って再現・再解釈が与えられていた点で、とても印象に残りました。この展示に関しては各所で専門的に語られると思いますので、先んじてメタボリズムの紹介を含んでいた「Mega-Structure Reloaded」展(ベルリン、2008)から、Tomás Saracenoというアーティスト(architectural artist)を挙げます。

メゾンエルメスフォーラム「クラウドシティ/トマス・サラセーノ」展が企画されていたという点で、2011年のトピックとしてここに書きます。3月14日から会期が予定されていたため、震災の影響で氏の国内初のエキシビションは延期になってしまいました。やむをえず2008年に見たベルリンでの展覧会からです。dNAがヴェネツィア・ビエンナーレの展示設営を終えた後、Transmediale.09に参画するための現場視察でベルリンに赴いた際に、Transmedialeディレクターの薦めにより見に行きました。

展覧会場はベルリン、ミッテのFormer State Mint。「Visionary Architecture and Urban design of the sixties reflected by contemporary artists」と打たれたサブタイトルのもとに、60年代の作品・資料展示群と現代作家の作品群により構成されていました。ArchigramのDennis Cromptonによりデザインされた会場は、ArchigramやSuper Studioの貴重な映像資料も並び、それだけでもとても価値のあるものでした。そのなかでエントランスのトンネルを抜けた中庭(Hinterhof)を支配するSaraceno氏のインスタレーションに圧倒されました。その透明感と力強さはベルリンの空色にも映えていましたが、ほかの場所(空)でも見てみたい気持ちになります。
いわゆる建築的なヴォキャブラリーに頼らないで、強く美しい建築や都市のヴィジョンを提示するのは、なかなか難しいことだと思います。カタログから見る「Airport City」などとタイトルされた一連のドローイングやインスタレーション、その美しさは一線を画しています。建築の空への近づき方とでも言いましょうか、そんなことを予見させます。

未見ですが、2010年頃より各地の文化施設屋内外で、実際に人が入れる具体的な建築としての大型インスタレーションに昇華しているようです。

「空中都市」という触れ込みもあり、正直そのキーワードには少々の現実離れ感、語りつくされた感があります。そういったファンタジックな側面より、実際のインスタレーションを構成している、ディテールや独特のテンション構造、空間構成の支配力、なによりその美しさに興味があり、今後の展開に注目しています。

●A3
「1」より東北の復興全般。「2」よりTomás Saracenoの展開。ヴィム・ヴェンダースの《PINA 3D》。《いのちの食べ方 Our Daily Bread》《プリピャチ Pripyat》を撮ったニコラウス・ゲイハルターの活動。

ヴィム・ヴェンダース《PINA 3D》

ニコラウス・ゲイハルター《いのちの食べ方 Our Daily Bread》

ニコラウス・ゲイハルター《プリピャチ Pripyat》

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