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新橋駅ドトール(名前はポン・ヌフ店!)にて瀬山と待ち合わせをし今回のフィールドワークを開始する。
さすがに僕らのフィールドワークも板についてきたようで、地下空間の見るべきポイントはお互い言わずともわかりあっているという気がする。実際、「なるほど、ここはこうなっているのか」なんて結構手際よく進んでしまって、時間的にもあまりかからなかった。
「わかりあっている」というのは僕が一方的に思っていることで、他のみんながどう思っているかわからないが、実はマンネリズムのようなものに陥る危険な兆候であるとも考えられる。
「笑っていいとも!」「タモリ倶楽部」のような「偉大なるマンネリ」と言えるような例もあるが、例えば「笑っていいとも!」の場合、曜日別レギュラーやゲストよりも司会者のタモリは、全体の進行を考えず、はめを外し、ゲストやレギュラー陣に絡み、突っ走るという構成が一貫してあるような気がする。それが同時間帯の他局との決定的な違いであり、長く続いている理由のようにも思える。
毎回訪れるゲスト地下街に対し、僕らにもうちょっと「タモリ的」な要素が加われば、フィールドワークが違った展開を見せるかもしれない。その場合それを決して計算高くやってしまってはいけないのだけど。
新橋は地下の特性というものをもっているようだし、演歌番組のセットのような地下の飲み屋街もそれはそれでおもしろいと思う。しかし、今回はなんだかとてもあっさりと、とりとめもなく終わってしまったような感じがする。このフィールドワークでは毎回なにかしらおもしろいことを発見しているが、今回はとても難しい……。
話を新橋に戻そう。
そしてその難しさのあまり、かどうかはわからないが、僕らは地上へ出て有楽町のほうへと歩き出した。
今まで途中で地上に出たとき、例えば池袋のときは、地下の屋上庭園という発見をしたが、今回もはたしてそのような発見があるのだろうかなどと考えつつ、高架下を歩く。僕らの歩いた「インターナショナルアーケード」一帯はどうやらJR東海の所有物らしいのだが、中の部屋らしきところのほとんどは、空室で現在は使われていないようだ。閑散としていて人通りも少ないが、実は新橋と有楽町を結ぶ近道であるらしい。有楽町の出口には「新橋方面への近道」というような看板もたしか出ていたと記憶している。そしてこの出口付近は首都高とJRがこのあたりでは最も接近する地点であるようだ。
と、ここまでの話だとなんだか地下とは関係がないんじゃないかと思ってしまうが、実は新橋の地下街にも適応できる考え方がこの中にある。詳しくは瀬山の論考を参照されたいが、新橋の地下は単体で見るだけではわからない構造(例えば都市のインフラと密接な関係をもっている)を内包していることがわかる。先の話では有楽町への近道や、地下ではないが首都高と接近してできる空間などがそれにあたるのかもしれない。地上と地下を分け隔てなく考えるということは僕らのやってきたことに少し反するかもしれない。でもそのことが地下の話にも直結することが今回のフィールドワークでなんとなく見えてきたことである。(田中)
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1──線路側外観。かつてはこちら側にも建物が建っていたため窓はひとつもない
2──通り側外観
3──有楽町側入り口
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ひとしきり地下街の散策を終えた後、田中と二人で新橋駅周辺をうろうろする。偶然、いつも山手線の窓から見えて気になっていたビルを間近で見ることができた[fig.1, 2]。周辺の再開発に伴って、街区の一角に3m×6mほどの小さな5階建ての建物がそこだけ取り残されたように建っている。この残され方がなかなか特徴的でおもしろい。写真を見てもらえればわかると思うのだが、小さなビルが壁面に何も付加されることなくきれいに塗装され、まるでモノリスのように建っているのである。なぜこのような残り方になったかは不明だが、とにかく「単に残されてしまった」建物でありながら、それとは無関係に意図を感じさせるような(とはいえ意図的にこのような建物を造ることはなかなか困難だと思われるが)、独自の存在感をもった建物になってしまっている。ちなみに、上階にはいくつか空き室があり現在テナント募集中。その後、JR高架下の「インターナショナルアーケード」を有楽町方面に向かって歩く[fig.3−5]。新橋−有楽町間を最短距離で結ぶ道でありながらかなり秘境的な趣をもったアーケードである。これを読んでいる人の中にも知らない人が大勢いるのだろうか。JRの高架下には居酒屋だけでなくこんなダンジョンもある。そういえばここも「地下街」の一種だ。(瀬山)
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4──内部
5──JRが高速と併走し隙間に谷間ができている。右側のヴォリュームの内部がインターナショナルアーケード
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