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荒田──建築家の自邸は、施主=自分というところが魅力的で、いろいろな実験が可能ですよね。ある意味、理想的なプロジェクトだといえるんじゃないかと思います。この本は、建築の設計の実験の他にも、住宅ローンの実験、ライフスタイルの実験、都市の実験という、大きく4つの実験を試みていて、その辺がすごく特徴的で面白いと思って紹介いたします。
松田──「新しい郊外」に括弧がついていて、積極的に郊外であることの有用性を使うというのは、新しい概念で面白いと思いました。
関連項目
『「新しい郊外」の家』
発行所:太田出版
発行日:2009年1月14日
著者:馬場正尊
判型:175×130mm
頁数:207頁
定価:1,554円(税込)
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隈研吾さんとタイトルから想像するのは、全国各地の自然素材を用いた建築の紹介や、環境に対する環境建築のアピールではないかということですが、読書後に思ったのは、この本が20世紀型建築との決別宣言ではないかということです。例えば、彼はこう言います。「20世紀建築の代表的な素材であるコンクリートは化粧の載りが良い。アルミや大理石、木などあらゆるテイストに対して自由に対応可能な素材である」。つまり20世紀というのは、どう見えるかということを追求した時代であったというのです。
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観察する人
荒田──この本の文章を読んでいくと、乾さんの「人となり」がよくわかります。
乾さんの事務所にお伺いしたときに、塚本由晴さんの影響を受けているとおっしゃっていましたが、塚本さんと同じように、乾さんは観察することにすごくこだわってる人かなという気がします。
高橋──この本の中の「幼稚園のウサギ」のエピソードにみられるように、そこからていねいに話を展開して、建築まで持って行くストーリングはおもしろいですね。
関連項目
乾久美子建築設計事務所
http://www.inuiuni.com/
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松田──荒田さんは、最近スリバチ学会のフィールドワークに参加されたとお聴きしましたが......
荒田──はい、2週間ほど前に「東京スリバチ学会初の下町低地の微地形鑑賞へ出かけます」という会に参加してきました。具体的には日本橋から浅草橋、それから南洋堂のある駿河台下、お茶の水を一日かけて歩きました。中沢新一さんの縄文時代のアースダイバーマップでいうと、歩いた地域は完全に海の底なんですね。このフィールドワークでは江戸時代の地図を資料として渡されました。その時の江戸は海の底ではなく、江戸城を中心として運河が張り巡らされているんですね。この運河は現在埋め立てられているのでその跡地を一日かけて歩いたんですよ。彼らの行動ですごく面白いなと思ったのは、普段感じ取れないような高低差をゴルファーがグリーン上で傾斜をすごく丁寧に読み取るのと同じ事を行なうんですよ......
紹介書籍
『アースダイバー』
発行所:講談社
発行日:2005年5月30日
著者:中沢新一
頁数:256頁
定価:1,800円+税