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今村──ロサンゼルスはグローバルなところですが、なかなか日本はグローバルプラットフォームにはならないところがあるような気がするんですね。阿部さんはロスに行かれて、改めて感じているところもあるでしょうし、20世紀後半の代表的な著名人たちもアメリカに引き寄せられちゃってるんですね。......阿部さんに期待するのは、向こうでやったことを日本に持ってきて日本でもやって欲しい。
阿部──アメリカと日本の関係は、80年代後半に切れたんですよね。昔はありましたよね、磯崎さんを中心に。その後中国がわあっと来て......来週プリンストン大学が来て東大でシンポジウムするらしいんですが、プリンストンが言うには、中国なんかよりも日本の方が面白いんじゃないかと。もう一回、そういう意味での建築にまつわるいろんな知識人との交流をやっていきたいんだと言っているらしいです。そういう意味では、中国、ドバイ的な建築の力の引き寄せ方に対して、もっと違うところで日本が何ができるかということがこれから大事だし、そういうことをどんどん......"
出演者プロフィール
阿部仁史
1962年宮城県生まれ。東北大学卒業。1992年までコープ・ヒンメルブラウンのアトリエに勤務。2007年よりUCLA建築・都市デザイン学科学科長。1992年阿部仁史アトリエ設立。作品に《宮城スタジアム》《熊本県苓北町民ホール》ほか。
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阿部──日本の事務所と往ったり来たりしていたんですけど、コンペなんかは自分の手元でやった方がやりやすいし、いろんなコミュニケーションを取るのに事務所があった方がいいと思って、[ロスの]自分の家の裏のボロボロだったガレージを直して、スタッフを一人雇ったんですね。それでコンペをやったら、とれちゃって。それであわててチームをつくって、いま4、5人がこのガレージの中に詰まっています(笑)。イタリア系カナダ人、パナマ系中国人、日系人、アメリカ人、オーストラリア人。しかもほとんど女性。そうすると、仕事の仕方というかコミュニケーションの仕方も自ずと違うんですね。会話ベースで、任せながら一緒にやっていくというような感じなんですね。"
出演者プロフィール
阿部仁史
1962年宮城県生まれ。東北大学卒業。1992年までコープ・ヒンメルブラウンのアトリエに勤務。2007年よりUCLA建築・都市デザイン学科学科長。1992年阿部仁史アトリエ設立。作品に《宮城スタジアム》《熊本県苓北町民ホール》ほか。
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阿部──もともと僕は動く建築が好きで......90年代の頭にフィリップ・ジョンソンが新建築のコンペをやっていて、僕も出しているんです。ジョンソンのガラスの家が次の世代にどうなるかというコンペで、僕が出したのは「振る」というテーマだったんですね。振ることによって、ガラスの家がどういう構造になって、どういう形になっていくか。おもしろかったのが、動くことによって、ドアもかわっちゃうんですよね。早く振るとバッテンにみえるじゃないですか。造形が連続して変わっていくんですね。それが面白かったんです。ひとつのジオメトリがひとつの操作を加えていくとまた違う形を生み出していって、それがひとつの連続した論理のシークエンスを生み出していく。......"
出演者プロフィール
阿部仁史
1962年宮城県生まれ。東北大学卒業。1992年までコープ・ヒンメルブラウンのアトリエに勤務。2007年よりUCLA建築・都市デザイン学科学科長。1992年阿部仁史アトリエ設立。作品に《宮城スタジアム》《熊本県苓北町民ホール》ほか。
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ポロック──私は、シカゴ美術館のキュレーターとして、日本の公共建築に関する展覧会を計画していました。......展覧会の研究で初めて阿部さんに会いました。若くて外国で勉強した建築家が大事なコンペに勝利したことにびっくりしました。しかし説明を聞いて納得しました。決まったビルディングタイプのタイポロジーをもちいて、新しい形と新しい機能をつくったからです。さらに、ランドスケープも含め、スタティックな建物をダイナミックな建物に変化させました。......
出演者プロフィール
ナオミ・ポロック
ハーバード大学出身。1988年文部省の奨学金を得て東京大学原広司研究室で修士論文を執筆。『Architectural Record』『a+u』『The New York Times』『Wallpaper』などにて日本の建築状況を伝える。著書に『Modern Japanese House』(Phaidon Press、2005)、『Japan 2000: Architecture and Design for the Japanese Public』(Prestel、1998)。
堀口徹
1972年オハイオ州生まれ。1995年東北大学工学部建築学科卒業。1997年同大学大学院修士課程修了。1999年オハイオ州立大学Knowiton School of Architecture建築学修士課程修了。2003年東北大学大学院工学研究科都市・建築学専攻博士課程修了、博士号(工学)取得。2003年同大学大学院都市・建築学専攻リサーチ・フェロー。2006年より東北大学助教、カリフォルニア大学バークレイ校客員講師。
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今村──あらためて作品集を見てみると、一つひとつの作品が非常に丁寧につくられています。初期の作品から通底するテーマがあきらかになって、うまく編集されていると思いました。この本には阿部さんのテキストがないんですね。作品解説にいたってもそう。経歴すらないんです。それくらい、咀嚼して本にしている。いまアクティヴに活動している建築家のモノグラフとしては、画期的な本だと思います。内容に関しては、造形の点から3つに分類されていて、テキストを読むと学生時代から、形をどのように決めていったらいいか悩んでいたことがよくわかる。......
出演者プロフィール
今村創平
1966年東京生まれ。1989年早稲田大学理工学部建築学科卒業、1990-1992年AAスクール(英国建築家協会建築学校)、1993-2001年長谷川逸子・建築計画工房勤務、2002年(有)アトリエ・イマム一級建築士事務所設立。
http://www.atelierimamu.com/
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松田──建築家2.0というヴァージョン・アップした建築家として、〈地域社会圏〉という建築と都市と社会の接点に、理顕さんが向かわれているように思います。
山本──単純に〈地域社会圏〉という400人くらいの単位にしただけで、圧倒的に効率がいいんですよ。電力の供給にしても、その場で発電して熱をつくって供給した方がはるかに安いしね。ゴミにしても、高齢者へのサービスにしても、圧倒的にその中で考えた方が有利なんですよ。いま与えられている社会システムの内側だけで考えていくことは、完全に破綻しているわけだから。建築家が思っているよりも、20世紀につくった建築のシステムというものは、国家に非常に強い影響を与えているはずなんですね。 "
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山本──施主というのはさまざまな形をとります。地方公共団体であったり、民間デベロッパーであったり、個人住宅の発注者であったり......。それらを全部施主と呼ぶのはまず間違いではないか。例えば、地方公共団体は施主じゃないんです。発注者ではある。発注者が市民のお金で、発注の手続きをしているに過ぎないわけだね。その発注者の意見と、われわれ建築家とのあいだだけでものをつくるというのは、ちょっと違うんじゃないかと。われわれ建築家が発注者の方向だけを向いていると間違えちゃうんですよね。そこには最終的には住む人がいるんですよね。その住む人の方を誰が見るのかというと、建築家が見るしかないんですよね。"
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山本──[デベロッパーが住宅を供給する]相手は住人じゃなくて投資家ですよね。そういった、住宅を投資の対象として考えた20世紀の経済そのものが、今回のサブプライム問題で大破綻をしたんだという気がするんですね。その最初のもとをつくったのが、20年代の建築家たちの集合住宅だったわけです。西川祐子さんだったと思うのですが、「集合住宅は20世紀の悪夢だった」と。それはそうだと思うんですよね。一住宅一家族というシステムは、経済を高度成長させるには非常に有効な商品だったけれども、われわれが本当に豊かに生活していくために、あれでよかったのかなと。そこをもう一度考える必要があると思うんですよね。"
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山本──エマニュエル・トッドの『新ヨーロッパ大全』という本があるんですけどね。ヨーロッパ全体を国単位じゃなくて、すごく細かい単位で分割していくと、さまざまな文化的な特質が見えてくるんです。平等原理と権威原理で調べていって、家族の類型を、絶対核家族、平等核家族、直系家族、共同体家族という4つに分けるの。それが面白いのは、なぜ日本とドイツが国家主義になったのか? なぜフランス革命が平等核家族から生まれたのか? 共産主義がどこで受け入れられたか? ということが全部書いてあるからなんです。家族構成によって、人間がある価値観を埋め込まれて、それで社会が動いた、ということを言った人なんですよ。それからハンナ・アーレントの『人間の条件』には、なぜ建築家がこんなに虐げられているのかということが書いてあるんです。人間の活動は労働と仕事に分かれていて、労働というのは......