PLAY
南──......世代的には、僕は仲俣さんや五十嵐さんとだいたい同じくらいで、リアルタイムで村上さんの作品が出る度に読んできました。自分自身が神戸の出身で、自分のコアの部分に引っかかってくるような作品として読んだのですけれども、今回あらためて、やはりすごい作家だなと思いました。僕や五十嵐さんは建築や都市の研究をやっているのですが、ある非常に構築的な作品を丹念に編み上げて作り上げる意思に感服するところがありますね......
PLAY
仲俣──......僕のブログは、ものすごくたくさん人がくるわけではないけど、この数ヶ月は「1Q84」で検索してくる人が多い。そのなかでも「1Q84」とセットで検索する人が多いのが「浅田彰」なんです。なぜかというと、浅田彰が80年代半ばに『1Q84』というカセットブックを出しているんですよ。「ドクトル梅津バンド」が音楽をやって、浅田彰がテクストを書いた......やはりニューアカの頂点だったと思うし、知的なサブカル的な80年代のイメージというのは、実はバブル経済前の80年代前半に形成されている。だから、1984年というのは僕にとって、ある種のポストモダニズムが肯定的に言われていた時期のピークな気がするんですね。
PLAY
五十嵐──......(『1Q84』の)冒頭にある、首都高速でむりやり途中で降りるというのは、場所論的に上手い。[高速道路は]構造的にも東京という都市構造にむりやりにはりめぐらされた別のネットワークになっているのだけど、たまに首都高に乗ると、本当に空間をワープしている......こことここが、こんな簡単につながるのかと、すごく不思議な空間体験をするんです。それをさらに強引に途中下車するということによってズレるというのは、東京の構造を考えるうえで、なんて上手いんだろうと......
PLAY
南──時代にからめて、都市について話してみたいなと思います。......ひとつに大都市論の文脈というのがあると思うのですね。東京には、ある種の雑踏のなかに紛れ込んだ極端な、徹底的な孤独としての主体みたいな話がある。その一方で、郊外論の系譜というものがあって、神戸であるとか札幌であるとか、あるいは東京の郊外というものとの、ある何か荒漠とした風景と対峙する主体みたいなところもあると思うのです。
PLAY
松田──五十嵐さんとこの本に執筆にして下さった方たちに本の紹介をしていただきたいと思います。
五十嵐──私は90年代以降いろいろな書評を書いてきました。そして、その書評をベースに90年代以降に読むべき本を挙げていきブックガイドをつくろうという企画が生まれました。しかし、私だけではすべてをカバーしきれないので、ほかの方々にも選んでもらい、そこで今回の本が完成しました......
五十嵐太郎編『建築・都市ブックガイド21世紀』
発行:彰国社
発行日:2010年4月20日
サイズ:286頁
価格:2,300円(税込)
※一部映像がご覧いただけます。[撮影・編集:彰国社編集本部]