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南──......世代的には、僕は仲俣さんや五十嵐さんとだいたい同じくらいで、リアルタイムで村上さんの作品が出る度に読んできました。自分自身が神戸の出身で、自分のコアの部分に引っかかってくるような作品として読んだのですけれども、今回あらためて、やはりすごい作家だなと思いました。僕や五十嵐さんは建築や都市の研究をやっているのですが、ある非常に構築的な作品を丹念に編み上げて作り上げる意思に感服するところがありますね......
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松田──荒田さんは、最近スリバチ学会のフィールドワークに参加されたとお聴きしましたが......
荒田──はい、2週間ほど前に「東京スリバチ学会初の下町低地の微地形鑑賞へ出かけます」という会に参加してきました。具体的には日本橋から浅草橋、それから南洋堂のある駿河台下、お茶の水を一日かけて歩きました。中沢新一さんの縄文時代のアースダイバーマップでいうと、歩いた地域は完全に海の底なんですね。このフィールドワークでは江戸時代の地図を資料として渡されました。その時の江戸は海の底ではなく、江戸城を中心として運河が張り巡らされているんですね。この運河は現在埋め立てられているのでその跡地を一日かけて歩いたんですよ。彼らの行動ですごく面白いなと思ったのは、普段感じ取れないような高低差をゴルファーがグリーン上で傾斜をすごく丁寧に読み取るのと同じ事を行なうんですよ......
紹介書籍
『アースダイバー』
発行所:講談社
発行日:2005年5月30日
著者:中沢新一
頁数:256頁
定価:1,800円+税
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勝矢──ある種の使い方なり文化なり政治といったものを重ねていって、ある種の資本として市場的に価値のあるものまで流通させる。そのための組織として AMOがあって、そのためにスクリプトを書くということだと思います。ですから、OMA/AMOは、スペクタクルとそれ以外を対置させているのではなくて、スクリプトという手段を使って......建築というすべてを市場の上にのっけているというふうに言えるのではないかということです。
卒業設計へ期待すること
吉村靖孝+山崎亮+藤村龍至+五十嵐太郎+山田幸司
2009年3月23日 名古屋市立大学北千種キャンパス MP3 13.1MB 19'04''
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山田──僕は見ていて、かたちが無くて大丈夫かなと思いました。......かたちがないというのは、今年の傾向として全国的にもそうですか?
五十嵐──......仙台なんかでは今年の審査員の構成が、妹島さん、梅林さん、平田さんと、かたちから選んでいくタイプの審査員が多かったせいもあって、卒計日本一のファイナルの時に、全然社会的なテーマが扱われていないじゃないかと会場から声が上がっていました。......
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学生──松川さんに質問です。多くのアルゴリズム設計がグリッドやキューブなど限られたかたちしか生み出さないのは設計のプロセスに問題があるのではないかというご指摘がありましたが、そこから設計手法をジャンプさせるために、どのような方法論を思い描いていらっしゃるのでしょうか。
松川──結局は、試行錯誤の回数とスピードをあげるということではなでしょうか。アルゴリズムをどれだけたくさん生み出せるかというのは、たくさんの人がたくさんの回数、試行錯誤をするなかで決まり、多様性が出てくるのだと思います。現段階では、試行錯誤の回数が少ない。ですから、構造的な問題ではないと思います。......
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坂牛──コールハースを含めて、最近の建築のスペクタリティというものは皆さんが一番感じていると思います。2005年に、アメリカのClark Art Instituteで「Architecture between Spectacle and Use」という会議があり、去年ヴィドラーが編集し、その内容が出版されました。......会議開催のきっかけは、ハル・フォスターのビルバオ批判のようですけれど......本のなかでヴィドラーは、フォスターのビルバオ批判を「ビルバオは結局、ギー・ドゥボールの『スペクタクルの社会』をリフレイズしたようなものだ」と言っています。「資本はイメージ化するまで蓄積される」ということのリフレイズだと。ヴィドラーはそれを言いかえて、「イメージは資本化するまで蓄積される」と表現する。そのように捉えたとき、ビルバオだけではなく、コールハースも同じだろうと言うのです。......
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松田──五十嵐さんはどれくらいの速度で本を読んでるのですか。速読術とかあるのですか?
五十嵐──初心者にはできないと思うんですが、本を読めば読むほどスピードは上がるはずです。逆に言うと、僕も建築の本を読み始めたころは苦痛で苦痛でたまらなくて、時間がかかっていました。ナナメ読みに近いのですが、僕の場合は、まず目次をみます。目次には建築でいうところのストラクチャーが載っているんです。どういうフレームワークで話が進むかということが、完結に書かれている。......次にあとがきを読みます。これは研究書に近いものについてですが、あとがきには、自分がそもそもどういう意図でこの本を書いて、どういう位置づけにあってということがコンパクトに書かれていることが多いです。......
出演者プロフィール
村上心
1960年生まれ。椙山女学園大学生活科学部生活環境デザイン学科教授。博士(工学)。1985年東京大学工学部建築学科卒業。1992年同大学工学系研究科博士課程満了。1997年蘭・デルフト工科大学OBOM研究所客員研究員。
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村上──1/1のデザイン、夕日の迫力。それらについて加藤さんに語っていただきたいと思います。
加藤──1/1のリアリティ。1/1の人間関係、伊予の世界、1/1の空間的な世界、1/1の心の世界、先ほど話した「用・形・意」。僕らが接する空間というのは1/1の空間に接するわけです。どれだけ計画しても1/500、1/1,000で図面を書こうが、結局僕らが出会うのは1分の1の空間なんですよね......
出演者プロフィール
加藤和雄
建築家・デザイナー。加藤和雄/状況空間研究所 所長。名古屋工業大学、椙山女学園大学非常勤講師。
村上心
1960年生まれ。椙山女学園大学生活科学部生活環境デザイン学科教授。博士(工学)。1985年東京大学工学部建築学科卒業。1992年同大学工学系研究科博士課程満了。1997年蘭・デルフト工科大学OBOM研究所客員研究員。
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仲俣──......僕のブログは、ものすごくたくさん人がくるわけではないけど、この数ヶ月は「1Q84」で検索してくる人が多い。そのなかでも「1Q84」とセットで検索する人が多いのが「浅田彰」なんです。なぜかというと、浅田彰が80年代半ばに『1Q84』というカセットブックを出しているんですよ。「ドクトル梅津バンド」が音楽をやって、浅田彰がテクストを書いた......やはりニューアカの頂点だったと思うし、知的なサブカル的な80年代のイメージというのは、実はバブル経済前の80年代前半に形成されている。だから、1984年というのは僕にとって、ある種のポストモダニズムが肯定的に言われていた時期のピークな気がするんですね。
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五十嵐──......(『1Q84』の)冒頭にある、首都高速でむりやり途中で降りるというのは、場所論的に上手い。[高速道路は]構造的にも東京という都市構造にむりやりにはりめぐらされた別のネットワークになっているのだけど、たまに首都高に乗ると、本当に空間をワープしている......こことここが、こんな簡単につながるのかと、すごく不思議な空間体験をするんです。それをさらに強引に途中下車するということによってズレるというのは、東京の構造を考えるうえで、なんて上手いんだろうと......
建築と法規
吉村靖孝+山崎亮+北川啓介+山田幸司
2009年3月23日 名古屋市内某所 MP3 19.6MB 28'34''
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北川──合法性とか、違法性とか法律というのはすべてが正しいわけではないし、違法性が文化を生む多々ありますよね。法とは最低限のモラルではないかと思うのですが、吉村さんは超合法建築図鑑という本を出されているので、法と建築についてお話ししていただければと思います。
吉村──超合法建築図鑑とは、町並み観察のひとつの方法として書いた本です。町の中で法規を守ったが故に、むしろ町並みから少し浮いてしまった建築をコレクションして一冊の本を作りました。今、法がモラルという話が出ましたけれども、法とモラルは少し違うと思うんですよね......
出演者プロフィール
吉村靖孝
1972年愛知県生まれ。1997年早稲田大学大学院理工学研究科修士課程修了、2002年同大学大学院理工学研究科博士後期課程満期退学。吉村靖孝建築設計事務所代表取締役、関東学院大学・早稲田大学芸術学校非常勤講師。
http://www.ysmr.com/
北川啓介
1974年名古屋市生まれ。1996年名古屋工業大学卒業。1999年ライザー+ウメモト事務所。2001年同大学院修了、博士(工学)。名古屋工業大学大学院工学研究科准教授。共著に『ハイパーサーフェスのデザインと技術』など。受賞に日本建築学会東海賞(論文)など。マンガ喫茶、出会いカフェ、コスプレをこよなく愛して国の会議でも奨励する発言をする。
http://www.kitalab.jp/
山崎亮
1973年生まれ。1999年大阪府立大学大学院農学生命科学研究科修士課程修了。2006年より東京大学大学院工学系研究科博士課程都市工学専攻在籍。京都造形芸術大学、京都市立芸術大学、近畿大学、大阪工業技術専門学校講師。studio-L代表。共著に『震災のためにデザインは何が可能か』『マゾヒスティックランドスケープ』『都市環境デザインの仕事』など。
http://www.studio-l.org/