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92 広島

私は、広島という地で22年間を過ごした。日露戦争時、臨時帝都にもなった広島は、日本の縮図ともいわれ、さまざまなものが混在しているというイメージがある。
この都市は、三角州の上になりたっているために、川が街中を何本も横切り、さらに、そこを車と市電が今にもぶつかりそうな距離で隣り合わせに走っている。そして、性格の異なる二つの世界遺産。一方は、日本が誇るべき世界遺産「厳島神社」。もう一方は、アメリカが近代に生み出した負の世界遺産「原爆ドーム」。厳島神社が存在し、神の島として崇められていた宮島があれば、戦時中、島内での毒ガス製造を隠すために地図から消されていた大久野島のような島もある。また、被爆建物といわれる廃墟が街中に点在する一方、東京に退けを取らない地元若手建築家達による初々しい作品があちこちで見られる。
そもそも広島市は一度リセットされた都市であり、この地で学生時代を過ごした丹下健三により、新たな街作りがスタートしている。それ以降できた巨匠たちによる公共建築の多くが「平和」という肩書きを持っており、広島は「平和都市」という名を我がものにしてきた。
しかし、ここ数年、そんな広島市と方向性は同じだが、明らかにその表現手法が真反対の都市が活気付いている。海自・海保の街であり、かつて戦艦大和がつくられた呉市である。映画「男たちの大和」の上映にあわせるかのように開館した通称「大和ミュージアム」。そして、事情の知らない人にはいまさらポストモダン?と疑われてしまうような、街中に浮く退役潜水艦が印象的な海上自衛隊呉資料館。また、坂の町として知られる尾道市は、上記映画の撮影場所となり、巨大クレーンが林立する造船場に、菊の御紋をつけた原寸大大和のセットがつくられたことで、呉市を盛り上げるのに一役買った。
平和とは何かを考えるのに、広島は非常に適した場ではある。しかし、その平和を考える場としての建築・都市づくりはどうあるべきか......この答えを見つけるのは非常に困難である。
使用している写真は、2006〜2008年のあいだに撮りためたものである。



[撮影者:下大蔵(東北大学大学院)]

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