PHOTO ARCHIVES

89 スリバチのすすめ

東京の都心部は武蔵野台地(洪積台地)が東京湾にせり出した東縁部に位置し、その台地は西から東へ流れる川の浸食作用によって刻まれ、7つの丘が連なる特徴的な地形を呈している。高低差10〜20mの谷は鹿の角のように枝分かれし、武蔵野台地の奥へと入り込む谷頭は三方向を台地(丘)に囲まれるため、「スリバチ状の谷戸」を形成している。フラクタルに存在する谷戸や丘の織りなす微地形を下敷きに、江戸から現代へと至る都市化の歴史を歩んできたのが東京の特徴とも言えよう。 地形とまちの関係を概略的に述べるとすれば、台地は江戸の昔、山の手として諸大名の江戸屋敷等に利用され、明治以降はその比較的大きな区画を生かして大学や病院、官舎、財閥系企業の用地として転用されてきた。再開発ではなく「置換」の歴史であった。一方の谷地も江戸の時代から下町として大きな区割りを変えず新陳代謝を繰り返してきた。丘の「山の手」と谷地の「下町」★1が、江戸の住み分け(ゾーニング)をベースにそれぞれの変遷をたどってきたため、地形を手掛りに東京を観察すると、興味深い都市景観が形成されつつある。 スリバチ地形や特異な景観は「空間的」であるがため、「建築」と違い1枚の写真ではなかなか概要を伝えにくいが、事例を連続的に示すことで「スリバチ地形と東京固有の都市景観」の魅力に少しでも触れていただければと考えている。


東京スリバチ水系図

★1──「下町」とは一般的には武蔵野台地の東に広がる低地部分を指すが、学会では「台地の窪み」に存在する町も「下町」に加えている。


撮影:岩屋光俊、駒井紀美子、特記以外は皆川典久



[撮影者:東京スリバチ学会]

→ 「公開の原則と著作権について」
このエントリーをはてなブックマークに追加

前の記事:90 図書館[2]
次の記事:88 金沢
Photo Archives|五十嵐太郎

INFORMATIONRSS

SPACE DESIGN TOOL BOX VOL.1 「空間デザインの道具箱」(渋谷区・11/21)

「空間デザイン」をもっと面白くするための道具や知恵を集めて、共有したい! 働く空間は、オフィスだけ...

保存再生学特別研究会「20世紀建築遺産の積極的保存活用に向けて」(千代田区・11/9)

都市内には、日々使い続けられている20世紀建築が多数存在するが、それらの保存活用における課題、それ...

上妻世海『制作へ』刊行記念トークイベント 上妻世海×門脇耕三×木内俊克(千代田区・11/30)

『制作へ』の表題論考「制作へ」は一種の身体論であり、身体拡張論である。制作を通じて身体を〈作品〉...

分離派100年研究会 連続シンポジウム第5回「分離派登場の背景に見る建築教育と建築構造」(文京区・11/3)

分離派建築会(1920年 東京帝国大学卒業・結成)を、日本の近代建築におけるモダンデザインの鼻祖と...

東京大学HMC企画研究「学術資産としての東京大学」/シンポジウム「本郷キャンパスの形成とそれを語る学術資産」(文京区・10/28)

本シンポジウムでは、2018年6月に出版された東京大学キャンパス計画室編『東京大学本郷キャンパス――...

ケンチクトークセッション「都市のパブリックをつくるキーワード」(港区・9/24、11/18)

建築家が公共的な建築に取り組むとき、どんなことを考え、何を理想としているのでしょう。 1985年に...
建築インフォメーション
Twitter Feed
ページTOPヘ戻る