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86 バウハウス

「あらゆる造形芸術の最終目的は建築である」☆1。この力強い宣言は時代の気運にも共鳴した。時は1919年、第一次大戦の翌年である。こうして始まったバウハウスの思想は25年にデッサウへ移転した翌年、ヴァルター・グロピウス(1883-1969)設計による校舎の竣工で建築として結実した。グロピウスは「国際建築」を論じ、28年にはCIAMが開催される。ここから、インターナショナル・スタイルが広がっていった。
1927年にデンマーク王立芸術アカデミーを卒業したアルネ・ヤコブセン(1902-71)にとって、隣国ドイツでの動きが大きなインパクトを与えたことは想像に難くない。極寒の地ゆえか、または貧しい時代を経た歴史的経緯ゆえか、機能性を重んじるデンマーク人気質と、バウハウスの掲げる機能主義はもともと馴染みがよかったのだろう。ヤコブセンはそれまで手掛けていたデンマークの伝統的なレンガによる建築から、スタイルを大きく変えた。ヤコブセンにおける「白の時代」のはじまりである。《ベラヴィスタ集合住宅》(1934)をはじめとして、白い壁面と黒いスティール・サッシによる建築はヤコブセンの生まれ育った地、コペンハーゲン北部のクランペンボーに今でも数多く残されている。ヤコブセンは63年に行なった講演会で、学生時代より小金ができるとドイツへ旅していたこと、ドイツの文化、特にバウハウスへの賞賛、そして35年前のバウハウスの思想が機能・技術・美学の相互関係において自身の創作においてなお有効であることを語っている(ハンブルグで行なわれた講演なのでドイツびいきの内容が含まれていたとしても否めないが)☆2
デッサウへの旅は、ヤコブセン巡礼の旅から始まった筆者のデンマーク留学を締めくくるにあたって、2人の建築家とその思想を結びつける旅でもあった。
☆1──http://www.meisterhaeuser.de/pdf/Bastelbogen_Meisterhaeuser.pdf
☆2──"On form and design at the present time", in Arne Jacobsen: Public Buildings, Whitney Library of Design, 1998.


各ページの註については下記を参照
★1──ヴァルター・グロピウス『デッサウのバウハウス建築〈バウハウス叢書12〉』(中央公論美術出版、1995)。
★2──LANDSCAPE OF ARCHITECTURES VOLUME 1, UPLINK, 2003.
★3──L・モホリ=ナギ『絵画・写真・映画〈バウハウス叢書8〉』(中央公論美術出版、1993)。
★4──アドルフ・マイヤー『バウハウスの実験住宅〈バウハウス叢書3〉』(中央公論美術出版、1991)。

脇坂圭一(東北大学大学院 都市・建築デザイン学講座)
http://blog.livedoor.jp/replanblog014/



[撮影者:脇坂圭一(東北大学大学院 都市・建築デザイン学講座)]

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