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64 ポーランド

2000年3月、日本インテリア学会東海支部主催によるポーランドでの学術交流に幹事として関わらせていただいた。そのときに撮影した写真の一部を紹介する。便宜的に、内容を大きく4つに分けて説明すると以下のとおり。

(1)学術交流の様子と現代建築
講演や展示、授業風景の見学等により相互に交流を深めるうち、ポーランドにおける建築教育では特に絵画や造形力の育成に力を入れているように感じられた。例えば、ウッチ映画演劇大学の玄関ホールの壁は、立体的な大理石仕上げに見えるが、じつは目地まで緻密に描かれた壁画である。このような事例は、ほかにも多く見られる。
また、近年のポーランドは、いわゆる民主化の精神が浸透してきており、その影響からか、ガラスを多用した開放的な雰囲気をもつ建築が徐々に建てられ始めている様子がみられた。
(2)教会堂
木造のローマ・カトリック教会堂は、いずれも戦後に建てられた建築であるが、内部の極めて精巧なバロック風の壁画は、ポーランドの教会建築の特徴として特筆できる。クラクフの聖マリア教会堂はレンガ造であるが、内部は木造教会堂と同様に極彩色だった。
(3)宮殿建築
ラジビウフ宮殿の内壁は一枚一枚すべての柄が異なる壁画よりもさらに緻密な上絵の施されたタイル貼り仕上げであった。ショパンの生家は復元。
(4)世界遺産
マルボルク城、ワルシャワ旧市街は大規模な修復を経てユネスコの世界遺産に登録されている。とりわけワルシャワ旧市街は、戦争で8割以上の建築が破壊されたといわれるが、その後、図面や写真などさまざまな資料に極めて忠実に、破壊された当時よりもむしろ古い状態に復元された。
また、二つの強制収容所は、人類の負の文化遺産であるが、ユダヤ人の学生たちが修学旅行に訪れているのを見て、それらを保存し、そこで起きた出来事を後世へ正しく伝えることの重要性を強く感じさせられた。なお、ビェルケナウ強制収容所は、現在、一部分が復元された状態であった。

以上を総じて、誤解を恐れずに言い切ってしまえば、ポーランドの建築はいわばレプリカであることに意義を見いだせるのではないだろうか。当時そのままの複製を作り直し続けるポーランドの人々の姿の向こう側に、有史以来、ほとんどの時代を戦渦の中に過ごしてきた彼らの不屈の情熱を感じずにはいられない。

★──現地での解説および通訳:愛知工業専門学校教授、野崎勉氏



[撮影者:近藤正一(日本文理大学 助教授)]

→ 「公開の原則と著作権について」

[学術交流の様子と現代建築]

pic  ワルシャワ工科大学建築学部

pic  ワルシャワ芸術大学インテリアデザイン科

pic  マーレック・ブジンスキー《ワルシャワ大学図書館》[1] [2]

pic  マーレック・ブジンスキー《最高裁判所》[1] [2]

pic  ウッチ映画演劇大学

pic  ヤギェオ大学

[教会堂]

pic  クシストフ・フバリブク《聖ヨハネ教会堂》

pic  聖母マリア教会堂

pic  クラクフ旧市街、織物館、聖マリア教会堂(世界遺産) [1] [2] [3]

pic  聖マリア被昇天教会堂

pic  聖バルトウオーミエイ教会堂

pic  聖マウゴジャータ教会堂

pic  聖マリア処女教会堂

[宮殿建築]

pic  ティルマン・フアンガメレン《ラジビウフ宮殿》

pic  アウグスト・ポヤトフスキー《ワジェンキ公園水上宮殿》

pic  フレデリック・ショパンの生家

[世界遺産]

pic  マルボルク城(世界遺産)[1] [2] [3]

pic  ワルシャワ旧市街(世界遺産)

pic  ピヨトルコフスカ通り

pic  ビェリチカ岩塩坑(世界遺産)

pic  アウシュビッツ強制収容所(世界遺産)[1] [2]

pic  ビェルケナウ強制収容所


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