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63 フィンランド

8月も終わりに近い夜の22時もまわった頃、ヘルシンキ空港に到着した私を迎えたのは真っ赤に染まった夕やけ空。夜中の夕やけに驚く間もなく、ヘルシンキ駅へ向かうバスに乗り込む頃にはすっかり日も暮れていた。松林に囲まれた道を抜けバスが街の中心部に近づくと、暗やみの中ぼんやりライトに照らされたレンガの塊が現われた。これが「文化の家」で、心待ちにしていたアアルトを巡る旅は思いもよらないほどあっさりと始まってしまったのであった。
旧マルカ紙幣にも描かれた建築家アルヴァ・アアルト(1898-1976)はフィンランド中に多くの作品を残しているため、往々にして先に述べたような予定外の遭遇が起きる。時折の遭遇を織り交ぜてアアルトを見て歩くことで、「アアルトを巡る旅」が意味するのが、単に「アアルト作品をフィンランドの南から北まで隈なく見てまわる旅」というだけではなく、「フィンランドそのものを見つめる旅」でもあるということに気付かされた。
とりわけ彼の住宅作品を通じてよく見かける、木やレンガの仕上げ、室内のレンガの暖炉、中庭とサウナや離れ家との関係性、現代でも北欧独特のスタイルとして世界中の人々に愛される家具や室内装飾など、それらはどれをとっても古くからフィンランドで行なわれてきたものであった。それらフィンランドの社会環境、風土が彼に求めたものが、彼独自の表現手法と相まって生まれたのがアアルト建築と考えることはできまいか。住宅や小さな役場で自らのスタイルを確立したアアルトは、経済や社会の発展とともにやがては大きな市庁舎や図書館、ホールを手がけるようになり、その作品は国と各都市の発展をなぞらえるように数、規模ともに大きくなっていったのである。
さらに、決して経済的に恵まれてはいないフィンランドで、アアルトがガラス、コンクリート、鉄ではなく、木やレンガを用いて次々と傑作を生み出していったという事実は、それが彼独自の表現方法であるということはもちろん、その地で建築をつくり続ける上での必然としても捉えることもできる。そういった意味で、フィンランドが誇る巨匠アルヴァ・アアルトは、フィンランドが生むべくして生まれ、彼の生きた時代のある種の足跡としてその作品を各地に残す、国を表象する建築家といえるのである。



[撮影者:北野亜弓(早稲田大学理工学部建築学科中川研究室)]

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pic  ヘルシンキ

pic  アルヴァ・アアルト《アアルト自邸》[1] [2]

pic  アルヴァ・アアルト《カンサネラケライトス(国民年金会館)》[1] [2] [3] [4]

pic  アルヴァ・アアルト《フィンランディア・ホール》[1] [2]

pic  アルヴァ・アアルト《クルトゥーリ・タロ(文化の家)》[1] [2]

pic  アルヴァ・アアルト《ヘルシンキ工科大学(オタニエミ工科大学)》

pic  アルヴァ・アアルト+エリッサ・アアルト《アカデミア書店》

pic  アルヴァ・アアルト《パイミオのサナトリウム》[1] [2] [3] [4] [5]

pic  アルヴァ・アアルト《マイレア邸》[1] [2] [3] [4] [5] [6] [7] [8]

pic  アルヴァ・アアルト《セイナッツァロの村役場》[1] [2] [3] [4]

pic  アルヴァ・アアルト《コエ・タロ(夏の家)/実験住宅》[1] [2] [3] [4]

pic  アルヴァ・アアルト《ユヴァスキュラ市立劇場》

pic  アルヴァ・アアルト《カルピオ邸》《ヌオラ・ハウス》《労働者会館》

pic  アルヴァ・アアルト《セイナヨキの市庁舎》

pic  アルヴァ・アアルト《セイナヨキの教会》[1] [2]

pic  アルヴァ・アアルト《セイナヨキの図書館》

pic  アルヴァ・アアルト《ラッピア・ホール》

pic  アルヴァ・アアルト《ロヴァニエミ図書館》[1] [2]

pic  ライリ+レイマ・ピエティラ《カレワ教会》

pic  スティーブン・ホール《フィンランド現代美術館/キアズマ》

pic  ティモ+トゥオモ・スオマライネン《テンペリアウキオ教会》


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