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56 フランス・ゴシック
ゴシック建築の内部では、それが巨大な石材を積み上げた組積造の建築であることを忘れ、近代以降の鉄骨とガラスの建築が引き起こすものと似た空間体験をすることができる。天井のリブと、それを受ける細いシャフト。それは決して主要な構造体ではなく、実際には背後に隠された巨大な石造部分が建築全体を支持しているのだが、建築内部に入った人の視線は否応なしにリブとシャフトという線条組織に引き付けられ、その強烈なリニアリティによって実際の重量感は消し去られてしまう。それこそがロマネスクとゴシックとを隔てるものであり、フランスで誕生したゴシックという新しい建築様式の重要な特徴といえるだろう。
ゴシック様式はサン=ドニの後陣(内陣+周歩廊)で誕生したといわれる。そこでは細いモノリスのシャフトが、天井のリブのそれぞれに対応し、骨組みによる構造が明解に視覚化されていた。今回ご紹介するなかで、リストの最後にあるオーセール大聖堂とディジョンのノートル=ダム教会堂は、フランス・ゴシック建築のなかで常に名前の挙がるものではないものの、細いモノリスのシャフトによるゴシック独特の空間をご覧いただくための好例として採りあげたものである。
加藤耕一(建築史)
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2004年の夏よりパリ第4大学にてゴシック建築の研究に従事している関係で、これまでにゴシック建築の写真を数多く撮影してきました。今回、その一部を以下のような構成でご紹介させていただきます。
[パリおよびその周辺で見られる、最初期のゴシック建築]
pic サン=ジェルマン=デ=プレ教会堂
[代表的な盛期ゴシック建築]
[その他のフランス・ゴシック建築]
pic オーセール大聖堂
pic ディジョンのノートル=ダム教会堂
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