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最終回 フィレンツェのミケランジェロ建築[79点収録]

最終回 フィレンツェのミケランジェロ建築[79点収録]

ミケランジェロといえば、《ダビデ像》をつくった彫刻家として、また《システィナ礼拝堂》の天井画を描いた画家として広く知られているが、建築家としての作品も残している。そのなかでもミケランジェロのアイディアが非常に高い割合で実現されていると考えられる建築作品が、フィレンツェの《サン・ロレンツォ聖堂新聖具室》と《ラウレンツィアーナ図書館》であり、ここではその2作品に《パラッツォ・メディチ》〈跪座の窓〉を加えた3作品を紹介したい。いずれも著名な作品であるため、すでに数多くの研究書や作品集が出版されているとはいえ、紙面に制限のある出版物では細かいディテールまで紹介されていないことも多い。そこで、こちらのデジタルアーカイブでは、多くのディテールを中心に紹介することにした。

ミケランジェロの活躍した時代は、建築史の様式ではルネサンスからバロックへの狭間のマニエリスムとして位置づけられ、ルネサンス建築において規範となっていた規則を逸脱する造形がつくられた。例えば今回紹介する3作品において、ミケランジェロは「持送り(渦巻装飾)」ひとつとっても、すべて異なるバリエーションをつくり上げている。ものの形は、似たような形でも、スケールを変えたりディテールを変形させることによって、まったく別の意味を持つことがありえる。ミケランジェロは、古代ローマの、「正統な」規範に則った建築をつくることに精力を注がれていた時代に、その規範を「かたち」として捉えなおし、少しだけ何かが異なる形をつくり出したが(このことは彼が彫刻家としてキャリアをスタートしたことと無関係ではないだろう)、その「似て非なる形」は、あくまでも既存の形との対比を意図されたものであり、既存の「建築」に対する問いでもあった。そういう意味では、ミケランジェロの建築とは、ディテールまでを細かく見ることで、はじめて彼の本当の意図が読み取れるものかもしれない。

今回紹介する写真のほとんどは2016年9月にフィレンツェを再訪したときに撮影したものだが、《ラウレンツィアーナ図書館》と《サン・ロレンツォ聖堂新聖具室》に滞在した延べ4時間余りのあいだ、見れば見るほど新しい発見があり興味は尽きなかった。筆者にこのような目を開かせてくれたのは、2006-07年のイタリア留学中に教えを受けたフィレンツェ大学のガブリエーレ・モロッリ先生の講義で、ここでのキャプションのアイディアの多くはその講義に負っている。また、《ラウレンツィアーナ図書館》の階段の段数については、野口直人氏にご教示いただいた。

参考文献
- San Lorenzo 393-1993 L'Architettura Le vicende della fabbrica, a cura di Gabriele Morolli e Petro Ruschi, Aliena, 1993
- Michelangelo e il Disegno di Architettura, ed. Caroline Elam, Marsilio, 2006.
- Gabriele Morolli: Scucendo e ricucendo: Gherardo Silvani e l'invenzione delle mensole 'impunturate' per le finestre inginocchiate di Palazzo Guadagni, [OPUS INCERTUM], Anno II, numero 3, Edizione Polistampa, 2007, pp. 53-65]



[撮影者:菅野裕子(横浜国立大学大学院特別研究教員)]

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