PHOTO ARCHIVES

197 ネパールの現状と被災状況

197 ネパールの現状と被災状況

2015年の4月25日にマグニチュード7.8の大地震がネパールで発生し、さらに続く余震でもひと際大きかった5月12日に発生した中国国境付近を震源とするマグニチュード7.3の地震で約50万軒以上の住まいが倒壊し、約9,000名もの命が奪われてしまった。すでに東日本大震災を経験し東北の震災復興の支援をしてきた自分にとってネパールの状況は他人事ではなく、震災から一旦落ち着いた頃に視察に行くことにした。ネパールは震災以前より、南アジア地域で所得水準の低い後発開発途上国のひとつである。さらに当時は政治的な問題からネパールの生命線ともいうべきインドとの国境がしばらく封鎖されて多くの物資を受け入れられないという、きわめて厳しい状況にあった。これにより支援物資の多くもなかなか届かず、ガソリンをはじめとする物資、資材が高騰し復興を遅らせていた。


長い雨季が過ぎ、震災から1年が経とうとしていた2016年3月末に向かった。到着した首都のカトマンズは想像していたより震災の被害を感じられなかったが、1週間の滞在で視察した村などでは甚大な被害を目の当たりにした。例えば、カトマンズから北西へ約50キロほどにある乾燥地帯のサッレ村では校舎のほとんどが倒壊し、竹とブルーシートの簡易校舎で過ごしていた。また、東北でお世話になった慶應義塾大学の小林博人研究室が建てたベニヤハウスプロジェクトがある東のチャリコット、最も被害の大きかったといわれるシンドゥパルチョーク郡を視察した。高低差が激しく舗装された道も少ないネパールでは50キロ進むのにも5時間かかる。途中に通った村々では倒壊した家屋や、トタンをアーチ状の曲げた屋根に空いた両端を木板の壁で閉じた、かまぼこ型の仮設住宅が多くみられた。


また、思いがけずカトマンズ市内の避難キャンプ「キャンプ・ホープ」を訪問することになった。ありがたいことに延長期間中はそのキャンプを支援しているドゥワリカスホテルに宿泊させていただいた。随所にある貴重なネワール建築の彫刻とカトマンズの喧騒から隔離された環境はまさにオアシスだった。


視察して復興は一向に進んでいないことを改めて確認した。学校や住宅の再建に必要な物資、資金ともに大幅に不足しており、先がまったく見えない状況が続くことは容易に想像できる。一方で多くの国内外の支援団体が活動していることも同時に確認できた。海外の支援に頼りながらもネパールの人々はともに復興に全力を注いでいる。彼らに対して少しでも力になれたらと「建築に何が支援できるか」を問い、可能な限り支援活動を続ける決意を新たに日本に戻った。



[撮影者:吉川彰布(一般社団法人ヒトレン)]

→ 「公開の原則と著作権について」
このエントリーをはてなブックマークに追加

前の記事:198 西河村の伝統的風景
次の記事:196 インド
Photo Archives|五十嵐太郎

INFORMATIONRSS

中村好文『芸術家(アーティスト)のすまいぶり』刊行記念「アーティストの住まいぶりと暮らしぶりから学んだこと」トークイベント(渋谷区・12/3)

アーティストにとって、住まいは「生き方の姿勢が、かたちになって見えるもの」(本文より)── ホンカ...

シンポジウム「建築家・根津耕一郎の仕事」(兵庫・11/16)

1960年代から70年代を中心に、関西を拠点として数多くの建築物を設計した建築家・根津耕一郎氏のシ...

トークイベント『土壁と柿 妙喜庵 待庵 書院及び茶室待庵 保存 修理の記録』刊行記念 藤森照信×田村尚子(中央区・11/21)

『土壁と柿 妙喜庵 待庵 書院及び茶室待庵 保存 修理の記録』の刊行を記念して、建築家であり建築史...

「窓展:窓をめぐるアートと建築の旅」(千代田区・-2/2)

わたしたちのくらしにとって窓はほんとうに身近なもの。それは光や風を室内に取り入れながら、寒さや暑さ...

「磯崎新─水戸芸術館縁起─」(茨城・11/16-1/26)

建築家・磯崎新による美術館設計を振り返るシリーズの一環として、当館では水戸芸術館の設計コンセプトや...

展覧会「Steven Holl: Making Architecture」(品川区・11/8-1/8)

アメリカを代表する建築家、スティーブン・ホールは72歳になった現在も、ニューヨークと北京にオフィス...

シンポジウム「占領期の都市空間を考える──記憶をいかに継承するか」(兵庫・11/23)

2019年11月23日(土・祝)にシンポジウム「占領期の都市空間を考える──記憶をいかに継承するか...

戦後空間シンポジウム 04「バブル・震災・オウム教─1990年代、戦後空間の廃墟から─」(港区・11/22)

主旨: 「戦後空間シンポジウム」第 4回目のシンポジウムは戦後空間の変質に目を向け、80年代後半か...

第5回「吉阪隆正賞」授賞式/記念シンポジウム(千代田区・11/18)

第5回「吉阪隆正賞」を受賞した西沢立衛氏による記念シンポジウムが、11月18日にアテネ・フランセ文...

[磯崎新の謎]展(大分・9/23-11-24)

大分市が誇る建築家・磯崎新(1931~)は建築の枠を超え、思想、美術、デザインなど多岐に渡る分野で...

展覧会「日本建築の自画像 探求者たちの もの語り」(香川県・9/21-12/15)

われわれがよく聞く『日本建築』とは、何なのか? そもそも、何が『日本的』なのか? 本展では『日本建...
建築インフォメーション
Twitter Feed
ページTOPヘ戻る