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162 インドネシアのカンポン

162 インドネシアのカンポン

大学院時代(2011-2013)に地域的建築を学ぶために、インドネシアにおけるいくつかのカンポンを回ってきた。カンポン(インドネシア語=kampung、英語=kampong)とはインドネシア語で「原住民の村」という意味である。インドネシア共和国は1.7万以上の島々で構成された島国であり、そこではさまざまな民族や文化が存在している。そのなかでも今回はジャワ島とカリマンタン島にあるカンポンの写真を紹介したい。
首都ジャカルタを抱えるジャワ島はインドネシアでもっとも人口が多い島であり、古くから政治と経済の中心地であった。4世紀から16世紀かけて、ヒンドゥー教や仏教を信仰する王国があったため、イスラム教が宗教の大半を占める現在においても、この島には当時の文化や地域的建築の名残がまだ残っている。ジャワ島の中部にある、かつて王国があった周辺には、カウマン(Kauman)、コタ・ゲデ(Kota Gede)、ソンダカン(Sondakan)というカンポンがあり、そこの住民たちは国王やその家族の生活のニーズを満たすため、職人や商人としての生活を続けてきた。そのため家の中には作業場や店舗があり、カンポンのなかにもモスク、路地、ゲートなど、コミュニティによってつくられた地域の共有的施設がある。一方、カンポン・ナガ(Kampung Naga)、マジャレンカ(Majalengka)、ンギビカン(Ngibikan)、サンギラン(Sangiran)という中心部から離れた、山間部のカンポンでは、おもな産業が農業であったため、村が農地に囲まれており、カンポンのなかに米の保存や脱穀などを行なうための地域共有の納屋や小屋がある。
ジャワ島の北に位置するカリマンタン島(ボルネオ島)は島国インドネシアでもっとも大きな島である。古くからこの島では川が貿易や地域の情報交換の場として使われ、住民生活と密接に関わってきた。例えばロック・バインタン(Lok Baintan)カンポンでは、住民たちの家は川岸に並んでいる。またスンガイ・ジンガー(Sungai Jingah)カンポンではカンポン自体が川の上に位置している。家の形態はジャワ島の家と異なり、川に適応するため、多くが高床式の家になっている。カンポンのなかではコミュニティによりつくられたモスクと木でできた小道がある。
紹介した二つの島におけるカンポンの特性は異なるが、共通点として各カンポンはそれぞれの地域が持つ歴史や土着の文化、地形などを反映した造りになっていたということである。今回取材をしてみて、コミュニティのなかの絆が非常に強いと感じた。カンポンの部外者である私はおもてなしをうけながらも少し警戒されたので、写真を撮るときはどうしても気が引けてならなかった。



[撮影者:ヘニ・オクトリヤニ・ウイジャヤ(九州大学大学院修了)]

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