PHOTO ARCHIVES

152 デンマークのミュージアム(前半)

152 デンマークのミュージアム(前半)

北欧に対してなんとなく憧れの念を抱く人は多い。近年、デザイン雑誌やインテリア雑誌などで北欧特集が組まれ、「北欧デザイン」は一種のトレンド=流行のような取り扱われ方をしている。しかし、古きよきもの(価値のある優れたデザイン)を何世代にもわたり大切に使い続けるライフスタイルは、じつは日本人が失ってしまった気質といってよいだろう。北欧デザインに憧れ、デンマークの首都コペンハーゲンを訪れる旅行者は跡を絶たないが、本当の北欧を知るには地方都市へ足を延ばしてみることをお勧めする。
私自身がコペンハーゲンで暮らしていたのは2006-2008年の2年間である。それ以降も2009年、2011年、2012年と長期休みを利用し再訪している。コペンハーゲンの現代建築はすでに紹介されており、ここで紹介するまでもないが、今回は「ミュージアム」をテーマに、私のように何度も再訪するリピーターのために、コペンハーゲン以外の地方都市もあわせて紹介することにする。〈デンマークのミュージアム〉と題して2回に分けて紹介するが、第1回は首都コペンハーゲンのあるシェラン島とフュン島、第2回はドイツと陸続きのユトランド半島とボーンホルム島の美術館建築を取り上げる。私が世界一好きな《ルイジアナ現代美術館》は、四季を通じて何度も訪れてもらいたい。
地方の小さな美術館は北欧近代建築の礎となった名建築が多い。そして地方都市には地方特有の魅力が備わっている。例えばスケーエンというデンマーク最北端の漁村は、後にスケーエン派と呼ばれるアーティストが集まり、漁民や市井の人々を題材にした絵画作品を数多く残している。この街に降り立つと磯の香が漂い、荒々しい大自然が広がっている。またデンマークを代表する建築家ヨーン・ウッツォンが幼少のころ暮らしたオールボーには、2008年ウッツォン・センターが設立された。敷地は海を臨む場所で、ウッツォンの父所有の帆船を展示する専用スペースが設けられている。代表作《シドニー・オペラハウス》のデザインも、ウッツォンの家族の歴史とオールボーの街を知ると、理解が深まるであろう。
このように今回は建築単体の写真だけでなく、その街の風景写真もあわせて紹介している。建築を巡る旅は、街の歴史やその土地固有のコンテクストを読み解きながら散策するのが醍醐味である。日本を訪れた外国人にも、東京だけでなく金沢や瀬戸内などの地方都市と美術館をお勧めしているが、北欧の魅力に取りつかれたリピーターには、地方都市の隠れた名建築をそれぞれの視点で見つけてもらいたいと願う。



[撮影者:和田菜穂子(東北芸術工科大学准教授)]

→ 「公開の原則と著作権について」
このエントリーをはてなブックマークに追加

前の記事:153 デンマークのミュージアム(後半)
次の記事:151 台北[95点収録]
Photo Archives|五十嵐太郎

INFORMATIONRSS

中村好文『芸術家(アーティスト)のすまいぶり』刊行記念「アーティストの住まいぶりと暮らしぶりから学んだこと」トークイベント(渋谷区・12/3)

アーティストにとって、住まいは「生き方の姿勢が、かたちになって見えるもの」(本文より)── ホンカ...

シンポジウム「建築家・根津耕一郎の仕事」(兵庫・11/16)

1960年代から70年代を中心に、関西を拠点として数多くの建築物を設計した建築家・根津耕一郎氏のシ...

トークイベント『土壁と柿 妙喜庵 待庵 書院及び茶室待庵 保存 修理の記録』刊行記念 藤森照信×田村尚子(中央区・11/21)

『土壁と柿 妙喜庵 待庵 書院及び茶室待庵 保存 修理の記録』の刊行を記念して、建築家であり建築史...

「窓展:窓をめぐるアートと建築の旅」(千代田区・-2/2)

わたしたちのくらしにとって窓はほんとうに身近なもの。それは光や風を室内に取り入れながら、寒さや暑さ...

「磯崎新─水戸芸術館縁起─」(茨城・11/16-1/26)

建築家・磯崎新による美術館設計を振り返るシリーズの一環として、当館では水戸芸術館の設計コンセプトや...

展覧会「Steven Holl: Making Architecture」(品川区・11/8-1/8)

アメリカを代表する建築家、スティーブン・ホールは72歳になった現在も、ニューヨークと北京にオフィス...

シンポジウム「占領期の都市空間を考える──記憶をいかに継承するか」(兵庫・11/23)

2019年11月23日(土・祝)にシンポジウム「占領期の都市空間を考える──記憶をいかに継承するか...

戦後空間シンポジウム 04「バブル・震災・オウム教─1990年代、戦後空間の廃墟から─」(港区・11/22)

主旨: 「戦後空間シンポジウム」第 4回目のシンポジウムは戦後空間の変質に目を向け、80年代後半か...

第5回「吉阪隆正賞」授賞式/記念シンポジウム(千代田区・11/18)

第5回「吉阪隆正賞」を受賞した西沢立衛氏による記念シンポジウムが、11月18日にアテネ・フランセ文...

[磯崎新の謎]展(大分・9/23-11-24)

大分市が誇る建築家・磯崎新(1931~)は建築の枠を超え、思想、美術、デザインなど多岐に渡る分野で...

展覧会「日本建築の自画像 探求者たちの もの語り」(香川県・9/21-12/15)

われわれがよく聞く『日本建築』とは、何なのか? そもそも、何が『日本的』なのか? 本展では『日本建...
建築インフォメーション
Twitter Feed
ページTOPヘ戻る