PHOTO ARCHIVES

139 スペイン(バルセロナ+ビルバオ)前半

139 スペイン(バルセロナ+ビルバオ)前半

1994年の世界遺産委員会で採択された「グローバル・ストラテジー」によって「文化的景観」「産業遺産」「20世紀以降の建築」が世界遺産として登録されることとなり、現在、この「グローバル・ストラテジー」に基づいて、世界遺産の内容の幅を拡大するため現代建築に大きく影響を与えた近代建築の世界遺産登録が進んでいるいる。その数ある近代建築のひとつにアール・ヌーヴォーの影響を受けてバルセロナを中心に花開いた芸術運動「モデルニスモ」があり、その代表とされるのがアントニ・ガウディの建築群である。そのモデルニスモ建築の多くはカタルーニャの民族主義と深く結びついており、マドリードなどのカスティーリャ文化を軸とする国家「スペイン」に対するアンチテーゼの意味合いもあるという。旅行中、世界遺産建築に感化され、そのような歴史的背景に思いを馳せることとなった。

はじめに2011年10月末にそのバルセロナを訪れたときに見た、世界遺産に登録されているガウディ建築群と現代建築数点を紹介したいと思う。
ガウディ建築群は観光地化への取り組みと保全活動のバランスが取れているのが特徴的である。保全活動にとって弊害と思われがちな世界遺産だが、観光収入の一部が保全と建築の費用に当てられるなど、観光をうまく共存できている遺産でもある。一方、現代建築は街並とはかけ離れた存在感を持って点在している。2012年現在、都市の郊外化が進み金融危機に瀕している欧州だが、バルセロナ市街には建設中の建物も多く、《サグラダ・ファミリア》もあと20年弱で完成と発表されるなど、これからもさまざまな変容を遂げようとしているバルセロナをまた訪れてみたいと思った。
次に、スペイン北部に位置する港湾都市であり、鉄鋼業が盛んなビルバオを紹介したい。1997年に開館した《ビルバオ・グッゲンハイム美術館》は観光だけでなくビルバオの経済も発展させたことは有名な話だが、美術館に続くかたちでネルビオン川沿いに建築が増殖していることも特徴的である。《グッゲンハイム美術館》の近くには楕円形の高層ビルやガラスブロックで覆われた商業施設などが立ち並び、磯崎新が再開発したイソザキ・アテナ(Isozaki Atea)と呼ばれる高層ツインタワーなどが象徴的である。

バルセロナを訪れた際に地元民に頂いたアドバイスがある。「初めて訪れた都市を、どこよりも高くすべてを見渡せるところからまず見て、街を観察しなさい」という言葉だ。バルセロナやビルバオに限ったことではないが、都市において建築の位置関係、都市開発などを、大きな視野で捕らえてから街を練り歩き建築を見て回るという体験は、非常に体系的に都市を理解できる良い方法だと感じた。「建築を見るにはまず展望台」をぜひお勧めしたい。

なお、今月より二カ月にわたってバルセロナとビルバオの写真212点を紹介する。



[撮影者:伊藤幹(東北大学工学部建築・社会環境工学科)]

→ 「公開の原則と著作権について」
このエントリーをはてなブックマークに追加

前の記事:140 スペイン(バルセロナ+ビルバオ)後半
次の記事:138 オーストラリア
Photo Archives|五十嵐太郎

INFORMATIONRSS

中村好文『芸術家(アーティスト)のすまいぶり』刊行記念「アーティストの住まいぶりと暮らしぶりから学んだこと」トークイベント(渋谷区・12/3)

アーティストにとって、住まいは「生き方の姿勢が、かたちになって見えるもの」(本文より)── ホンカ...

シンポジウム「建築家・根津耕一郎の仕事」(兵庫・11/16)

1960年代から70年代を中心に、関西を拠点として数多くの建築物を設計した建築家・根津耕一郎氏のシ...

トークイベント『土壁と柿 妙喜庵 待庵 書院及び茶室待庵 保存 修理の記録』刊行記念 藤森照信×田村尚子(中央区・11/21)

『土壁と柿 妙喜庵 待庵 書院及び茶室待庵 保存 修理の記録』の刊行を記念して、建築家であり建築史...

「窓展:窓をめぐるアートと建築の旅」(千代田区・-2/2)

わたしたちのくらしにとって窓はほんとうに身近なもの。それは光や風を室内に取り入れながら、寒さや暑さ...

「磯崎新─水戸芸術館縁起─」(茨城・11/16-1/26)

建築家・磯崎新による美術館設計を振り返るシリーズの一環として、当館では水戸芸術館の設計コンセプトや...

展覧会「Steven Holl: Making Architecture」(品川区・11/8-1/8)

アメリカを代表する建築家、スティーブン・ホールは72歳になった現在も、ニューヨークと北京にオフィス...

シンポジウム「占領期の都市空間を考える──記憶をいかに継承するか」(兵庫・11/23)

2019年11月23日(土・祝)にシンポジウム「占領期の都市空間を考える──記憶をいかに継承するか...

戦後空間シンポジウム 04「バブル・震災・オウム教─1990年代、戦後空間の廃墟から─」(港区・11/22)

主旨: 「戦後空間シンポジウム」第 4回目のシンポジウムは戦後空間の変質に目を向け、80年代後半か...

第5回「吉阪隆正賞」授賞式/記念シンポジウム(千代田区・11/18)

第5回「吉阪隆正賞」を受賞した西沢立衛氏による記念シンポジウムが、11月18日にアテネ・フランセ文...

[磯崎新の謎]展(大分・9/23-11-24)

大分市が誇る建築家・磯崎新(1931~)は建築の枠を超え、思想、美術、デザインなど多岐に渡る分野で...

展覧会「日本建築の自画像 探求者たちの もの語り」(香川県・9/21-12/15)

われわれがよく聞く『日本建築』とは、何なのか? そもそも、何が『日本的』なのか? 本展では『日本建...
建築インフォメーション
Twitter Feed
ページTOPヘ戻る