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120 アーヘン

アーヘンはドイツの西端に位置する人口26万人ほどの地方都市である。古代ローマ時代から温泉が湧くことで知られ、8世紀末にはカール大帝が神聖ローマ帝国の都をここに置いた。以降、この街は神聖ローマ帝国の政治的中心機能のひとつを担ってきた。ユネスコ世界遺産のリストにも名前があるアーヘン大聖堂も、当時のカール大帝専用礼拝堂をもととしている。また、現在ドイツ国内のエリート大学のひとつに指定されているアーヘン工科大学を筆頭に学生数だけで4万人近くを占め、街に活気を与えている。このように、アーヘンは歴史的都市・大学都市・温泉保養地の三つの顔をあわせ持っているといえる。本稿では、現在私が暮らしているそのアーヘンの中心市街地の町並みと利用について報告したい。

アーヘンの中心市街地は市壁跡の2重の環状道路に囲まれた約直径1.7kmの中に収まっている。とくに直径1kmほどの内環状道路内は多くが歩行者優先道路となっており、先述の大聖堂や旧市庁舎およびその前のマルクト広場、多くのレストランやブティックなどの重要な都市機能が集まる。1656年にアーヘンの街を襲った大火以降旧市街地では木造建築の建設は禁止されており、石造りの建物が全体の町並みを形成している。ただし第2次世界大戦では都市の大半が戦災にあっているため、多くが戦後再建されたものである。
この街の空間的特徴は、中世都市らしいマルクト広場を中心とした有機的な街路形状と、それをもとにした大小の不整形の広場である。それになだらかな高低差も加わり、都市空間にリズムを与えている。とくに、交差点以上広場未満、といったような道の結節点にできた不整形な空間が、オープンカフェ、モニュメント、ベンチ、ストリートミュージシャンの演奏の場などさまざまな用途に使われ、行き交う人の歩みを穏やかにさせている。水の街として知られるだけあり、モニュメントは水にかかわるものが多い。最大となるのは、その歩行者専用エリアの入り口とも言える荘厳なエリーゼの泉である。つねに温泉水が沸き出しており、利用者は自由に温泉に触れたり味わったりすることができる。エリーゼの泉の裏は緑のある小公園となっており、石造りの旧市街の中でとりわけスポット的に抜けている。市民の憩いの場となっており、暖かい季節には陽にあたりながら水辺に足をひたし涼む姿もよく見られる。反対側となる旧市街地の北西にはアーヘン工科大学の敷地が刺さるように入り込んでいる。大学周辺は学生街となっており、特にポント通りには学生向け食堂が軒を連ねる。
旧市街地の中心に位置するマルクト広場-大聖堂広場はこのアーヘンのへそと言える。歴史的観光地としてだけではなく、週に3回開かれる定期市は都市の機能を確実に果たしている。定期市の他にも四季折々のさまざまなイヴェントが頻繁に行なわれ、ヨーロッパ都市の中心市街地が持つ機能を実感させられる。



[撮影者:今西美音子(アーヘン工科大学 都市計画・都市交通研究所 博士候補生)]

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