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119 ルーマニア

ルーマニア北東部のモルドヴァ地方には、壁一面がフレスコ画で覆われた聖堂が数多く存在し、その希少性から、ユネスコの世界遺産にも登録されている。
そもそも、これらの修道院の建立は、14〜17世紀、この地にあったモルドヴァ公国に由来する。シュテファン大公(在位1457〜1504)とその子息ペトル・ラレシュ公の治世(在位1527〜1538、1541〜1546)において、公国は二度に渡り最盛期を迎え、この地域特有のモルドヴァ建築様式が発展した。
その最大の特徴である外壁のフレスコ画が装飾様式として定着するのは、ラレシュ公の時代である。イスラム教徒のオスマントルコ帝国がヨーロッパへと勢力を拡大するなか、両国の戦闘は激さを増す一方であった。
そこで、ラレシュ公は、キリスト教国家の団結を国力強化の要と位置付け、聖堂の外壁にフレスコ画を描かせた。
正教の教義により、内壁は定められた図像に従って描かれなくてはならないが、外壁の主題には、地域性が認められる。歴史的な神話や逸話が描かれていることも多く、モルドヴァ民族は善人として、敵対していたトルコ民族は罪人として描かれているなど、社会情勢に照らして、身近に教義を感じるように工夫がされている点が興味深い。
現在でも、修道院は地域の人々のコミュニティの中心として機能し、壁画は人々に変わらぬ心のあり方を語りかけている。修復家のたゆまぬ努力によって、壁画そのものだけでなく、人々の生活や文化も大切に受け継がれているのである。



[撮影者:舘﨑麻衣子(特定非営利活動法人 歴史的建造物保存協会 理事長)]

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