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117 インド
世界規模で見ても有数の広大な国土と世界第2位の人口を持つ大国、インド。インドは国土全体の歴史を単線的な王朝史でみることはできない。過去のどの時代でも多数の国家が割拠し、別々の文化・生活スタイルが芽生え、成長してきたからだ。おもな宗教はヒンドゥー教であるが、ほかにイスラム教、仏教、ジャイナ教など多数存在する。こうした国家背景が立ち現われた街と溢れかえる人々が相まったインドを一言で表わすとすれば、「混沌」なのではないだろうか。
そんな混沌とした都市にはさまざまな宗教建築や英領時代のコロニアル建築、近代建築などが同期している。宗教建築の階段井戸やジャーミ・マスジトなどはいたるところに彫刻装飾が施され、そうした細やかな部分の集積でつくられる大空間は必見である。また、旧ヴィクトリア・ターミナス駅や行政庁舎のようなコロニアル建築は異文化が移植されたように存在感を漂わせる。移動中、コロニアル建築によって街の雰囲気ががらりと変わってしまう様は日本ではできない体験である。
近代建築の波は独立後に押し寄せる。インドの近代建築といったら、やはりル・コルビュジエとルイス・カーンであろう。ル・コルビュジエはアフマダーバードとチャンディガールに大きな影響を残した。ル・コルビュジエのブリーズ・ソレイユや特殊な雨仕舞いのような彫塑的な造形は、日差しが強く高温、雨期の凄まじい雨量などの風土と適合しているように思える。そして、いまも弟子筋のB・V・ドーシによってインド建築に影響を与え続けている。一方、カーンは現地の未熟練労働力を教育したうえで安価な素材を用いて、インド経営大学を作り上げた。こうして彼は近代建築の傑作と技術をインドに残すことで多大な影響を与えた。
厳しい気候、インド人の自由奔放さ、長時間移動、衛生面と食事など苦労する場面は多いが、ぜひ現地で異質な建築文化と近代建築の傑作を身体的に感じるのは良い経験であろう。
なお、これらの写真は2009年9月に3週間にわたり、縦断・横断した際に撮影したものである。
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