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102 マンハッタン:高層建築

レム・コールハースの『錯乱のニューヨーク』により紹介されているニューヨークのマンハッタン、この街は市場原理によってつくられる建築が競い合う都市である。
ツインタワーを失ったいまも、次々に新しい建築が市場原理むき出しの状態で姿を現わす。
大規模建築の施主というのは、歴史を通じて権力と財力を持つ象徴として位置づけられてきた。宗教や、国家の象徴としての役割を経て、現在は、そのなかに新しい勢力として、経済を支配する企業も加わったと考えてよいであろう。
経済原理によってつき動かされてきたニューヨークの街では、高層建築が建ち並ぶ。ミースの《シーグラムビル》は美しくパークアヴェニューにそびえ、そのほか《AT&Tビル》や、《IBMビル》、そして、ロックフェラーセンターの《GEビル》、最近では、ノーマン・フォスターの《ハーストタワー》もそのなかに加わっている。

住宅市場においても経済原理が主導してきたことは言うまでもない。それまでの経済原理が支配する住宅建築というのは、効率主義一辺倒といってもいいぐらいに、より多くの住居を限られたスペースのなかにいかにうまく詰め込むことができるかということ、もしくはどれだけ広いスペースを提供できるかということ、そしてその立地こそが、コンドミニアムの価値を決めてきた。
そこに新しい風を吹き込んだのが、マンハッタンのなかでも再開発地域と呼ばれる場所に建てられた高級コンドミニアムやホテルであった。もともとの立地だけでは、魅力に限りがあることから、建築自体をブランド商品としてしまう手法をとり、そのブランド商品としてのクールな空間を持つ建物により、限られたスペースにより高付加価値なものを創出しようとするこれもまた素直に経済原理の欲求にしたがったことから導き出されたひとつのソリューションだったと言える。
この手の建築やショップが増えてくることで、エリアとしての魅力が増し、多くの人をひきつける原動力となった。これは、新たなエリアの創出を意味し、都市をより充実させていくことに大きく貢献している。見捨てられていたエリアが新しい風により、再生され、そこが発展し、最先端のエリアとして注目されていく、マンハッタンの歴史はそういうプロモーション活動の連続の歴史でもある。
資金が潤沢にあるディベロッパーが、さらに高級で新しいスタイルの住宅を求める顧客に応じた結果、有名建築家が新しいスタイルの空間をデザインすることが付加価値となり、数値的経済効率ではなく質的経済効率と言える建物を市場が求めたということであろう。

リチャード・マイヤーのペリーストリートのコンドミニアムが、最近での有名建築家による新しいスタイルの高級コンドミニアムのさきがけかもしれない。まさにアートは資金のある場所に集まると言われるように、建築も同様であり、有名建築家もこぞって、資金がうずまくマンハッタンでプロジェクトの花を咲かせている状況である。ただ、昨今の世界中を巻き込んだ金融危機のため、これまでのような大規模プロジェクトに建築家が今後も活躍の場を得られるかどうかわからないが、一時期に花が咲いたことは間違いない。これも市場が欲する経済原理にしたがったかたちで形成された結果といえるのではないだろうか。

企業がなんらかの意図により、付加価値をつけさせた建築を総称して、私はブランディング建築と呼んでいる。ブランディング建築については、いくつかの類型を設定している。
《クライスラー・ビル》や、《TWAターミナル》は、建築の表現によって、その建築がどのような種類の企業であるかを表現したものとして考えられる。これを類型I型とする。一方、建築家の個性によって設計されたものとして、《メットライフ・ビル(旧パンナムビル)》や、《デイリー・ニュース・ビル》、《ロックフェラー・センターGEビル》《AT&Tビル》《CBSビル》があげられる。これを類型II型とする。残りは、様式主義による建築を、企業が所有するかたちである。これを類型III型とする。どのビルが、どの類型に相当するかという点においては、意見の分かれる部分もおおいに考えられるが、ブランディング建築として定義できるものは、この3つに分類できるのではないかと考える。

クライアントのコンセプト、もしくは業務などを建築的に表現しようと試みる類型I型こそが、今後CIとしての建築を企業が必要とする際に、建築としては面白い展開が期待されていくものであると注目して期待したいし、また私自身も関わっていくことができればと思う。



[撮影者:岸本充弘(建築家/InflectionNet)]

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