【第2回】[インタヴューを終えて]アーバンデザインの青春と私たち

太田浩史
maki
株式会社 槇総合計画事務所
地域計画・都市設計 業務概要(昭和55年版)
まず、中野さんのお話で印象的だったのは、槇事務所時代の瑞々しさだった。当時は槇事務所内にアーバンデザイン室があって、中野さんは若くしてそのチーフとなるのだけれど、そこでの体験が何か中野さんの青春であるとともに、槇事務所の、さらには日本のアーバンデザインの青春物語のようであった。CIAMの都市計画ではなく、人間中心の都市をつくろうという、20代の中野さんと40代の槇先生の気概が話を聞くこちらにも伝わってくる。さらに、その周囲の中村勉さん、元倉眞琴さん、栗生明さん、大野秀敏さん、陣内秀信さん、亡くなられた北沢猛さんなどなど、都市を志した若き日の皆さんの姿と、交わされたであろう議論の熱が、話の向こう側に立ち上る。30年前、槇先生をはじめとして、皆が新しい都市の姿と、それを生み出す方法を模索していた。そしてアーバンデザインという言葉は、共通の希望として輝いたのである。対話に出てくる槇事務所のアーバンデザイン関連のポートフォリオは、そうした時代の情熱を確かに証言する、濃厚な、野心に満ちたものであった。

それだけに、その青春の後日談はほろ苦い。特に、中野さんがふと話された「槇先生は都市から遠ざかっていった」という発言は耳に残った。スパイラルビルや東京都体育館、さらには幕張メッセを手がけていく槇先生のキャリアを考えると、これは私たちには意外な発言である。しかし、これは建築のプロジェクトとして都市に関わろうという戦術変更であって、アーバンデザイン室の中野さんから見れば、槇事務所の野心が着地点を見出すことのないまま宙吊りになったことを意味している。それほどまでに、アーバンデザインの定着は難しく、状況は絶望的だったのだ。
しかし、なぜ、独立後の中野さんが「アーバンデザインと言わないようにしている」と言いながら、そのアーバンデザインを続けているのか、なぜ、闘病中の北沢先生が「アーバンデザインセンター」という名前の組織を数多く残そうとしたのか。30年前の思いの強さは、困難に跳ね返されつつも、それを上回るように生きていると私は思った。圧倒的な負け試合であるかもしれないが、戦いは続いている。少なくとも、今では門司という事例があり、横浜という事例があり、それら個性ある都市空間をベースとした、地方分権に向けた議論がある。これだけ変わるのだとしたら、これから30年後の日本の都市空間も、もっともっと変わっていけるのではないか。それを希望として、私たちは私たちなりにこの戦いを続ければよい。そのように感じたインタヴューだった。

そのほか、あとはメモ書き風に。これはいつでもその話になるのだが、都市を語るメディアが少ない。それは対話にもあるように、『都市住宅』があった70年代からも、私が学生だった90年代からも後退している。これは私や中島さんの課題なのだと痛感している。それから「アーバンデザインと言わないようにしている」という中野さんの意見は率直であった。「シビックプライド」がそうであるように、「アーバンデザイン」もかなりバタ臭い。日本の状況にローカライズされた言葉がもっと開発されるべきなのだろう。それが「まちデザイン」かどうなのかはわからないけれど、こうしたニュアンスはなるべく大切にしたい。最後にもうひとつ。「都市は末期症状を通り越している」とさえ語る中野さんは、そうは言ってもいろいろな街を歩かれたり調べられていて、まだまだ都市に夢中なように思われた。今度はもう少し空間的・計画論的なお話をお聞きしたいと思う。

◉ 太田浩史 おおた・ひろし/建築家



※「新しい『まちデザイン』を考える」は隔月で連載を行ないます。


201110

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