サウンド路上観察のためのブックガイド

大門信也(法政大学大学院環境政策研究所特任研究員)+金子智太郎(東京芸術大学美学専攻博士後期課程)
ここではサウンドスケープに関する国内外の書籍をいくつか紹介する。ならびは、上から、総論(理論)〜各論(実証・実践)とした。なお、解説内の「モード××」については本特集の「音の路上観察へむけて」で詳しく言及している。

1──R. Murray Schafer, The Tuning of the World, New York: Knopf, 1977.(=『世界の調律──サウンドスケープとはなにか』[鳥越けい子+小川博司+庄野泰子+田中直子+若尾裕 訳、平凡社、1986])

→いまもって最重要基本文献。明示された定義にはモード1の色が強く出ているが、じつはモード2として改めて学ぶところの大きい著書でもある。[大門]

2──Truax, Barry(ed.), A Handbook for Acoustic Ecology, Vancouver: A.R.C. Publication, 1978.

→WSPの活動を総括するハンドブック。モード3の定義はここに記されている。Barry Truax, Acoustic Communication Second Edition(Westport: Ablex Publication,2001)の付録CD-ROMとして入手可能。[大門]

3──『耳の建築──都市のささやき』(INAX出版、1994)

→浜田邦裕、藤本由紀夫、中川真らが音と建築、都市の関わりを論じる。イアニス・クセナキスのインタヴューも収録。内容は非常に雑多だがテーマが重要。[金子]

4──David Rothenberg and Ulvaeus. Marta(eds.), The Book of Music and Nature: An Anthology of Sounds, Words, Thoughts, Conneticut: Wesleyan University Press, 2001.

→このアンソロジーは本特集で言及しなかった音楽と環境音の関わりがテーマ。著者のバラエティーが豊富で、特に音楽家による文章が充実。谷崎『春琴抄』抜粋も。[金子]

5──岩宮眞一郎『音の生態学──音と人間のかかわり』(コロナ社、2000)

→音響学からサウンドスケープ論への接近のあり方を平明に紹介している。モード2における記述の方法を探る手掛かりとして読みたい。[大門]

6──鳥越けい子「音の風景からたどる都市」(佐藤健二 編『21世紀の都市社会学3──都市の解読力』頸草書房、1996、pp.133-181)

→WSPの定義をモード3として深化させていく端緒となった神田サウンドスケープ調査の全容を紹介している。[大門]

7──中川真『平安京 音の宇宙──サウンドスケープへの旅』(平凡社、1992)

→京都という都市のサウンドスケープを、さまざまな手法を駆使して浮かびあがらせている。すでに古典的な位置を占める著書である。[大門]

8──『沖縄の反戦ばあちゃん──松田カメ口述生活史』(平松幸三 編著、刀水書房、2001)

→沖縄・南洋に生きた女性の爆音体験をライフヒストリーから理解しようとする、サウンドスケープに根差した騒音研究の範例と言える。[大門]

9──中島義道『うるさい日本の私──「音漬け社会」との果てしなき戦い』(洋泉社、1996)

→90年代、サウンドスケープ論との緊張関係を孕みながらも共に音の文化論を喚起した。モード2への自己限定を安易に許さない議論として、念頭においておくべき。[大門]

10──David Dunn, Why Do Whales and Children Sing?: A Guide to Listening in Nature, Santa Fe: Earth Ear, 1999.

→生態音響を提唱する作家、デイヴィッド・ダンが世界中で行なった音響調査の記録。環境と生物の関係に注目し、ザトウクジラから自転車レースまで取り上げる。CD付き。[金子]

11──Bernie Krause, Wild Soundscapes: Discovering the Voice of the Natural World, Berkeley: Wilderness Press, 2002.

→フィールドレコ─ディストとして有名なバーニー・クラウゼの著書。サウンドスケープの記述方法、録音装置の扱い、アーカイヴ作成などを実践的に解説。CD付き。[金子]

12──Pauline Oliveros, Deep Listening: A Composer's Sound Practice, Lincoln: iUniverse Inc., 2005.

→「ディープ・リスニング」の理論と実践。このコンセプトに対する批判は多いが、気功も取り入れて全身で音を聞くという発想はやはり独特。[金子]

13──Mark M. Smith(eds.), Hearing History: A Reader, Athens: The University of Georgia Press, 2004.

→サウンドスケープの歴史を広範に扱ったアンソロジー。多くの時代やトピック、方法を網羅し、この分野の概要を知るには最適。[金子]

14──Emily Thompson, The Soundscape of Modernity: Architectural Acoustics and the Culture of Listening in America, 1900-1933, Cambridge/London: The MIT Press, 2002.

→セービンの残響式と近代音響学の成立を軸に、20世紀初頭の音と技術との化関係を幾重にもたどりなおし、モダニティのあり様を浮き彫りにした意欲作。[大門]

だいもん・しんや
1976年生まれ。環境社会学、サウンドスケープ論。法政大学大学院政策科学専攻博士後期課程修了。博士(政策科学)。法政大学大学院環境政策研究所特任研究員。

かねこ・ともたろう
1976年生まれ。美学、聴覚論研究。東京芸術大学美学専攻博士後期課程在籍。東京工芸大学非常勤講師。共著=『iPhone x Music──iPhoneが予言する「いつか音楽と呼ばれるもの」』。


200906

特集 サウンド路上観察・序説


音の路上観察へむけて
城南島海浜公園周辺のサウンドスケープ
宣伝する声──街頭宣伝放送
サウンド路上観察のためのブックガイド
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