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特集:201401 2013-2014年の都市・建築・言葉 アンケート<

保坂健二朗

4月、「武雄市図書館」が改修工事を終えて再開館、また「佐世保の実験住宅 ハウステンボススマートハウス」(設計:東京大学生産技術研究所川添善行研究室)が竣工。ともに九州で偶然に同月。前者はCCC、後者はHISに関係するプロジェクト。ある世代以降の経営者の、「建築」に対する意識の変化を象徴するかのような出来事ではなかろうか。5月、国立近現代建築資料館が開館。業界にとっては悲願であったと思われるが、「一般」に、あるいは「国外」に周知しようという努力がほとんど見られない点には、美術(館)の立場から関心を持ち続けてきた者として、あえて苦言を呈したい。8月、ハンス=ウルリッヒ・オブリストの『キュレーション──「現代アート」をつくったキュレーターたち』(フィルムアート社)の翻訳が刊行される。「現代アート」の展覧会の黎明期においては、建築が相当に重要な位置を占めていたことが改めてわかる好著。しかし、となると今日に見られるひどい「分化」はなぜ生じたのか......。おそらくはキュレーターの「自称専門家化」ゆえであろう。その点、8─10月の「あいちトリエンナーレ」が、客人(まれびと)的な五十嵐太郎氏のディレクションの下、都市とアートと建築とに真っ向から取り組んだことは、現代アートのあるべき姿への回帰だったとすら言える。11─12月の「F/T13」では、Port B(高山明)の「東京ヘテロトピア」が、大都市東京に存在しているはずの「ヘテロ」を、聴覚という身体的な感覚を通して、訪れた者の肉体に、あるいは記憶に、柔らかく刻み込んだ。12月、ソウル市内に韓国国立現代美術館がオープン。同館の3つめとなる施設で巨大。6月には香港のM+の建築コンペも終わっており、それらのアグレッシブさに比べると日本の文化行政の停滞を強く感じざるをえない一年であった。

ハンス=ウルリッヒ・オブリスト
『キュレーション──「現代アート」をつくったキュレーターたち』

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