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特集:201401 2013-2014年の都市・建築・言葉 アンケート<

田川欣哉

2009年にサンフランシスコで生まれたリムジン・タクシー配車サービスの「UBER」(https://www.uber.com)。その完成度の高いユーザーエクスペリエンスとビジネスモデルを武器に、この数年でアメリカを中心に爆発的な勢いで成長を遂げている。

ユーザーはスマートフォンのアプリからこのサービスを利用する。アプリをダウンロードし、そこにクレジットカードを登録することで準備は完了。アプリを起動すると、地図画面が立ち上がり、自分の周囲にいる呼び出し可能な車が表示される。一台選んで、実際に呼び出してみると、数分でその車が目の前に現れる。ドライバーの質も担保されているから、運転は安全で正確。しかも、運賃の支払いはアプリにより自動で行なわれるため、目的地について下車する際に財布を出す必要がない。私も実際に使ってみて、下車の際に支払をする必要がないその快適さに驚いた。これはもはや魔法的な体験である。このように、呼び出しから乗車を経て下車まで一貫してスムーズでクオリティの高い体験を味うことができる。私は仕事柄、さまざまなサービスを利用し研究しているのだが、「UBER」が私のなかでは2013年のベストサービスであった。

私自身、このサービスを使い始めて、サンフランシスコという都市に帯するイメージが一変してしまった。ビジネスで各都市に短期滞在する私はタクシーを頻繁に利用する。サンフランシスコでの「タクシーが拾えない」「運転手の質が悪い」「車が古い」といったタクシー環境への不満は、そのまま都市への不満へと繋がっていた。それがこのサービスを利用することで、うそのように解消されてしまった。私のなかでサンフランシスコは、もはや「移動が快適な都市」になったのだ。

「UBER」は、道路やタクシーといった都市の既存インフラを最新のITを駆使することにより再編集することに成功している。ハードウェアにはひとつも手を付けずにである。オリンピックを控えた東京を考えるとき「UBER」の成功例は示唆に富んでいる。都市計画を考えるとき、ハードウェア・ソフトウェア・サービスの高度な編集作業を視野に置くことができるか。新しい頭で考えたいものだ。
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