ENQUETE

特集:201401 2013-2014年の都市・建築・言葉 アンケート<

中島直人

●A1
「今からでも復興計画の更新の必要性を強く感じています」

ちょうど一年前になる。企画・編集を担当した『建築雑誌』の2013年3月号のための座談会で、当時、内閣府大臣官房審議官兼災害対策法制企画室長であった佐々木晶二氏が語った言葉である。2011年3月11日から2年近くが経とうとしていて、各自治体の復興計画の大要が決まり、事業に向けて動き出しつつあった。編集側の私たちは、結局、中央政府・官僚がフレームをつくり、従来とおりの開発主義のもと基盤整備を最優先する復興計画を、近代固有の成長社会を前提とした復興体制を引きずっているとしてあえて「近代復興」と名付けて、批判的に検証しようとしていた。口では何と言ったか、あるいは編集意図にどう書いたかは別として、正直、すでに方向性が決まり、動き出しつつあった復興計画に対して、不埒にも高みからただ評論するような気持ちがどこかにあったのかも知れない。佐々木氏の「復興計画は今からでも変更できる」「いや、更新しなくてはならない」という言葉に、はっとさせられた。たとえ、各自治体の復興計画の立案に携わっていなくても、被災地で支援する現場を持っていなくても、都市計画に関わる者は誰もが「当事者」としての気持ちを持ち続けなくてはならない、そう、思った。

『建築雑誌』2013年3月号

その後、2013年8月に日本建築学会大会で開催された研究協議会「復興のプランニングⅠ 「復興計画」から「まちの再建・再生」へ」の企画を担当する機会があり、ここで佐々木氏や、自治体の復興のプランニングを支援している都市計画研究者にもご登壇頂き、被災した各自治体の復興計画の全体像を俯瞰し、一体どこを変更、更新しないといけないのか、そのための方法はどのようなものが考えられるのかを議論した。要点だけを紹介すると、今後も続く人口減少を見据えた際に明らかに過大な基盤整備事業をどのように適正な規模に縮小していくのか、が最もクリティカルな現場の課題であることが確認されたということであった。そして、まちの再建との関係づけが整理しきれないまま先に進んでいる防潮堤建設の問題も改めて提起された。いずれも震災直後から指摘されていた話である。都市計画の関係者の多くは、3.11は20世紀後半型の都市計画の惰性を断ち切る不連続点となる(べきだ)と思ったが、震災から3年目の現在において、実はひとつの正念場を迎えている。
なお、佐々木氏は、ご自身のブログで下記のような文章をまとめている。参考までに紹介しておきたい。

● 広めにかけた土地区画整理事業を縮小する方法について(第二稿) http://shoji1217.blog52.fc2.com/blog-entry-1563.html

● 海岸保全施設の高さと復興まちづくりについて(法的視点から、私案) http://shoji1217.blog52.fc2.com/blog-entry-1570.html

●A2
昨年のアンケートで、ニューヨークの都市デザインに着目すべきだと書いた。2013年11月に行われたニューヨーク市長選挙では、三期12年間務めたマイケル・ブルームバーグ市長に代わる新たな市長として、民主党のビル・デブラシオ氏が当選し、2014年1月1日に市長に就任する。20年ぶりの民主党政権となり、格差解消をはじめとして、さまざまな政策が大きく転換していくものと思われる。ブルームバーグ市政下で積極的に取り組まれた都市デザイン戦略の多くが、この後、どうなっていくのか。都市デザインと政治との関係を、引き続きウォッチしていきたい。

●A3
東京という都市のこれからについて、あるいは東京を出発点として、日本の国土のありようについて、多くの人が関心を持つきっかけとなるのではないかと思っている(久しく人々の関心の中心から外れていた「都市」が、また舞台に戻ってくるという思いもある)。特に2020年までという、ある「時間」の長さが共有されることが、議論の土台としては大きいと思う。7年先という近未来はすぐそこであろうが、少なくともこれからの方向性を見定めるには十分な時間である。しかし、「東京オリンピック」を「さまざまなアーバニズムのアリーナ」を生み出す契機として活かすためには、現在の単なる「施設配置計画」としてしか表現されていない構想の背景やその先の展望について、やはりここでも「当事者」のひとりという思いで探求を重ねていかなくてはならないと考えている。
INDEX|総目次 NAME INDEX|人物索引 『10+1』DATABASE
ページTOPヘ戻る