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特集:201401 2013-2014年の都市・建築・言葉 アンケート<

ドミニク・チェン

2013年は計算機と人間のアーキテクチャにどっぷり漬かる年でした。 2013年7月に青土社より『インターネットを生命化する──プロクロニズムの思想と実践』を上梓しました。この本の第一部は『10+1』での連載がベースとなっており、第二部は2013年3月に東京大学に提出した博士論文がベースとなっています。今回一冊の本にまとめるうえで、生命論とネットワーク・コンピュテーションの接続を改めて再考するきっかけとなりました。

ドミニク・チェン
『インターネットを生命化する──プロクロニズムの思想と実践』
(青土社、2013)

IT業界においては、GoogleAppEngineやParseのようなBaaS(Backend as a Service)の発展が著しく、スマートフォンやタブレットのクライアントアプリケーションの開発が一層進化してきたと感じています。また、iBeaconのような物理デバイスが市販されたり、Kickstarter上で新しいデバイスが続々と開発されたり、2014年のGoogle Glassやスマートウォッチ等のウェラブルデバイスの登場を控えて、昨今のPCからスマホへの移行に見られるような身体とネットワーク・コンピュテーションの距離の短縮が一層進むことが予想されますが、建築や空間の設計においてもこうした状況と呼応する動きが出てくるのではないでしょうか。
計算デバイスと身体がますます密接することによって、アプリケーションの設計においても純粋な計算機科学的な議論だけではなく、ユーザーの身体性に基づく議論も同等に重要になってきていますが、「モノのインターネット」(Internet of Things)の敷衍もそろそろ本格化しそうな気配を感じています。
この度、「ファブ社会」について考える集いに建築家、法律家、大学人のメンバーと共に参加することになったので、2014年前半を通して、2020年頃までに実現されるべき情報ファブ社会について考えを深めることになると思います。
2020年といえばちょうど東京オリンピックが予定される時期ですが、オリンピックそのものについては、被災地の復興、原発の再稼働問題、農産物の風評被害の払拭、そして次の大地震のリスクに向けた耐震改修など、日本国内に閉じていた諸々の問題が国際的に注目され、より透明なかたちで検証され、対応が生み出される契機となればいいと思います。日本のファブ社会は大文字の「復興」と切り離して考えることはできないのではないでしょうか。
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