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特集:201401 2013-2014年の都市・建築・言葉 アンケート<

山内真理

●A1

私は普段表現や創作・文化に携わる個人や組織体の会計・税務などに従事している。そのなかで税制の複雑さとわかりにくさがもたらす諸問題や、文化や社会的価値と経済・産業を巡るジレンマについて、草の根の活動や異業種協働で自分なりにできることを模索してもいる。
国の借金が1千兆円を突破したと報じられた6月、知人の縁でとあるイベントに参加した。税制の仕組みを15分ほどで説明して欲しいというオーダーだった。「税金はどこへ行った?(WHERE DOES MY MONEY GO?)」こう題されたこのプロジェクトは★1、市民や自治体職員有志が公開資料を元に1年間の市税の使い途や金額などをわかりやすく可視化する。元はイギリスが発祥だが、日本では横浜市を皮切りにまたたく間に全国に広がった。
オープンデータ化のプロセスを通じた、このようなボトムアップの取り組みには、硬直化した課題解決手法を柔軟化するために必要な協働や着眼点への示唆が豊富に含まれている。
税制は財政と一体となった究極のアーキテクチャだ。例えば地域発クラウドファンディングのニュースは多様なオルタナティブの選択や試行の可能性と必要性をあらためて問いかける。法律や制度変更には多大なコストを要するが、それらとの付き合い方には創意工夫の余地も多分にある。

★1──「税金はどこへ行った?(WHERE DOES MY MONEY GO?)」
URL=http://spending.jp/

●A2

私は幸いなことに、本業やArts and Lawの活動を通じ、法律家、アーティスト、デザイナー、建築家、漫画家、プログラマー、さまざまな文化経営に携わる方々などとお付き合いがある。2014年はこうした方々とどんな協働ができるのかが楽しみだ。
直近のプロジェクトとしては、新年冒頭漫画家育成事業を手掛ける「トキワ荘プロジェクト」(NPO法人NEWVERY)のもと、プロの漫画家、編集者と協働して、クリエイター向けに消費税増税の留意点を解説するマンガを制作した(山内は原案・監修を担当)。
マンガはネット上で無償公開され、有難いことに一般の多くの方の目にまで触れてもらえる結果となった。
消費税制度は課題もあり、複雑でわかりにくく一般の理解度はけっして高くない制度だ。2014年4月、2015年10月と2段階にわたり実施される予定の税率変更は、消費者にとっても中小事業者にとっても影響が重大であるがゆえに、マンガ作品を通じ、こうした発信ができたことは幸いだった。

●A3

急激な少子高齢化による社会保障費負担やインフラ老朽化、不動産・知財の利活用の問題など、都市や社会を巡る長期的な諸課題と税制の問題はけっして切り離すことができない。
2項対立といった状況を打開し、豊かさの定義を問い直し、多様な選択肢を柔軟な発想で選び取って、持続可能な形で組み立てていくべきだ。
そのために、市民と専門家が同じテーブルで丁寧に議論することや、異種の専門性同志が立場を越えて小さくても可能性のあるプラクティスを集積することが、課題を解決可能なサイズに解きほぐし、人々の前向きなコミットメントをもたらすと信じている。むろん個々の会計・税務の専門家は主体的に試行していくべきと思う。


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