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特集:201401 2013-2014年の都市・建築・言葉 アンケート<

城一裕

●A1

スノーデンとインターネットおじさん

両者ともにポスト・インターネットを実感させてくれた存在。円城塔さんではないが★1、エドワード・スノーデンは秘密は暴かれるものだということを端的に示してくれた。一方で、インターネットおじさんは、人間拡声器★2ではなく「リアルRT」、SNSでのつながりではなく「リアルフォロー」、さらには「リアルペイパル」というかたちでインターネットがあたりまえになった後の世界を体を張って具現可している★3

インターネットおじさん

★1──円城塔「今こそ政治を話そう 好きな子の名前は秘密」(朝日新聞DIGITAL、2013年11月21日)
URL=http://www.asahi.com/articles/TKY201311200666.html
★2──メガホンの利用が制限されたオキュパイ・ウォール・ストリートで生み出された手法。「ある人物がグループや群衆に向かって話したい場合、ワンフレーズを発すると、それが発言者を取り囲む人々の声によって復唱され、その声は次々に遠くの人によって復唱される」。
括弧内引用出典=「世界に広がる『怒れる者たち』」(ル・モンド・ディプロマティーク日本語・電子版、2012年6月号、土田修 訳、URL=http://www.diplo.jp/articles12/1206-2(indignes).html
★3──「リアルRT」=誰かの言ったことをその場で叫んでくれる。「リアルフォロー」=跡をついて歩いてきてくれる。「リアルペイパル」=後述のインターネットヤミ市に参加するために行なわれている銀行振込のこと。詳細は、http://www.internet-dude.com/を参照。

●A2

インターネットヤミ市 in ベルリン

昨年出版された書籍『FABに何が可能か──「つくりながら生きる」21世紀の野生の思考』★4のなかで松井茂さんが、3・11以降のパーソナル・ファブリケーション(個人的なものづくり)の可能性は、キャピタリズムにおけるイノベーションではなく、貨幣の価値に関わらないということをアドバンテージとした芸術活動として、テクノロジーを実践的に意識化することにあると述べている。その意味において、社会構造の変革を目指すFabLabでも、アカデミズムの新たなあり方を試みるニコニコ学会βでもなく、一見なんのことかわからない「インターネット感」を売買の対象としてしまい、貨幣の価値そのものにも疑いを向けているようにすら思えるインターネットヤミ市★5が、ウィキリークスの創設にも関わったカオス・コンピューター・クラブ(CCC)のお膝元、ベルリンの地にて開催されることは感慨深い。

Back streets of the Internet

★4──松井茂「FABが芸術を変える」(『FABに何が可能か──「つくりながら生きる」21世紀の野生の思考』、フィルムアート社、2013)
★5──100年前から続くインターネット上の秘密結社、IDPWの主催するフリーマーケット。先述のインターネットおじさんによる「リアルRT」を始めとしてインターネットに関するあらゆるものが売り買いされる。三度目となる今回は初めての海外での開催。詳細は出展者募集サイトおよびプロモーションビデオ「Back streets of the Internet」を参照。

●A3

現在、文化庁からの助成を受けて「アート/メディア/身体表現に関わる専門スタッフ育成事業」★6を実施している。この事業では、現代テクノロジーを用いた多岐にわたる芸術表現を支える人材の育成を目指している。前回のロンドンの例を出すまでもなく、オリンピックが総合的な文化イベントとして演出されていくことは明らかであり、それらをも担うであろう人々を育てる場に関わるということに良くも悪くも責任を感じる。

★6──平成25年度文化庁大学を活用した文化芸術推進事業として実施。
URL=http://amp.iamas.ac.jp/


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