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特集:201301 2012-2013年の都市・建築・言葉 アンケート<

成相肇

●A1

マームとジプシー《ワタシんち、通過。のち、ダイジェスト。》

美術館関係の話題に限って恐縮だが、ネガティブな話題としては、目黒区美術館で開催予定だった「原爆を視る」展が結局お蔵入りになったこと、横須賀美術館が電通に企画を丸投げした件などが思い出される。Blum & Poeでのもの派展、MoMAでの戦後前衛展など、アメリカで5-60年代の日本の美術展が相次いだことも記憶に新しい。好企画として
久万美術館の松本俊夫展、高知県立美術館の絵金展、東京国立近代美術館の一連の60周年企画、仙台メディアテークの志賀理江子展、東京都現代美術館のMOTアニュアル2012を挙げたい。東近美の60周年の関連で、なぜかメディアでほとんど話題に上らなかったのだが、連夜にわたって展示室が自由空間と化した「14の夕べ」はめっぽうおもしろかった。国立館がひねりの効いた質の高い仕事でリードする状況で、他館の奮起が待たれる(他人事ではない)。


Requiem for the Sun: The Art of Mono-ha/Tokyo 1955-1970: A New Avant-Garde, Museum of Modern Art
志賀理恵子 螺旋階段/白昼夢──松本俊夫の世界

●A2

未見だがすでに開催中の「福岡現代美術クロニクル」(福岡市美術館、福岡県立美術館)の充実ぶりを聞くに期待が高まる。新たなミュージアム像を意欲的に見せてくれる東京大学総合研究博物館が丸の内に進出してオープンさせる「インターメディアテク」も非常に楽しみだ。
昨年からますます顕著になった、個人もしくは小さなグループが小規模のイベントを繰り返し開いている動向に引き続き注目したい。SNSの助けも得て、労力においても経済的にも低コストかつフレキシブルで、ともかく人が集まってアイディアを寄せ合う活動は今や当惑させられるほど盛んだ。これに関して、昨年の夏だったか、ある大先輩にこの動きを興味深いと伝えた際にたいへん冷ややかな返答を返されたことが印象に残っている。その返答の要点は2つ。
──1、東京でのみ可能なことだ、他では人を集めることが無理だろう。
──2、そんな小さなことを続けたところで何も変えることはできない。
1は、じっさいそうかもしれない。けれどもインフラ依存が少ない以上は、都市に限らず応用範囲は広いのではなかろうか。繰り返されることで方法論も蓄積されつつある。2については、圧倒的な世代差を感じざるを得なかった。その大先輩の世代、今や各所で要職に就かれている方々がこれまで蓄積してきた啓蒙活動や大プロジェクト、また研鑽を重ねた交渉能力やマネジメント能力、あるいは理論武装(死語)の恩恵を少なからずぼくらは受けている。とはいえそうした大きなお仕事は、多大なコストと引き換えに内外において生じざるを得ないストレスに目をつぶってきたこともたしかではなかろうか。近年の動向はその遺産を受けた必然の成り行きでもあろう。ストレスの伴う硬直した会話でなく、より対話しやすいいわば「人柄」に相当する部分を、今多くの人々が育てようとしているように感じている。

福岡現代美術クロニクル1970-2000(福岡県立美術館+福岡市美術館)

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