ENQUETE

特集:201301 2012-2013年の都市・建築・言葉 アンケート<

市川創太

●A1
◉中谷芙二子氏の霧の彫刻 @ Lille Europe railways station
FANTASTIC 2012 - Lille3000(日本からはクワクボリョウタ、堀尾寛太などの作家が出展)のために制作された霧の彫刻です。
Koolhaasがマスタープラニングをし、Portzamparc、Nouvel などによってデザインされた建築群。ある建築家世代であれば雑誌などで見覚えのあるこのフランス北部のLille駅前は当時のデザインテイストが残り多少寒々しいような場ですが、雲のように出現した霧はとても立体的で、空間を絶えず変容させていました。方向感覚を失った人々が「駅の入口はどこですか?」と尋ねあう様子が印象的です。この霧の彫刻は常設されることになりました。

◉György Kepes氏
2012年ハンガリー・エゲルにオープンした《kepes intézet》
のエントランスデザインをdNAが担当したことから、関係者とのやり取りや資料を閲覧していく過程で、彼の先進的なクロスフィールド性、影響力を再認識しました。MITで教鞭をとっていた頃も、特異で貴重な存在だったと言われています。日本ではあまり知られていないのがすこし残念です。 http://www.facebook.com/KepesKozpont

◉Oscar Niemeyer氏
その都市、建築を見つめる目の持ち主が104歳だったこと、やはりどこまでも宇宙的です。

●A2
全て手前味噌で恐縮ですが2つほど。
2012年5月に展示スタートした新宿初台NTT ICCでの「ダブルネガティヴスアーキテクチャー コーポラ凝固・凝結」が2013年3月まで継続します。これまで研究してきたコンセプトが実体化したもの(しつつあるもの)にフォーカスました。dNAのこのような展示形式・内容は初めてのものです。
また、市川が関わっている都市デザイン研究チームがwebページをオープンする予定です。メンバー全員建築家、空間的相互作用などを基にした都市ポテンシャル評価、マッピング、統計などをヴィジュアライズしたり出力するソフトウェアなどを自作しています。建築から都市へさまざまなスケールへの適用を模索するため現時点では抽象度を保っていますが、徐々に具体的なアプライなど内容を拡充していく予定です。

●A3
あらゆる復興のための活動、尽力に敬意を表します。自分は被災地に拠点を置く者ではありませんし、現時点で直接復興に関係するプロジェクトには関わっていませんので、状況や実態を把握できず、何かを言える立場ではありません。
耐災害、耐震、省リソース、省エネルギーということは、そもそも建築に実装されているべきことなので、そういう文言のみによって計画やヴィジョンがアピールされることには賛成できません。震災によって破壊されて未実装であった部分、十分でなかった部分が露呈しましたので、基本的なことは見直そう、というのはわかりますが、そのこと自体に主眼を置くことは、後退としか思えません。震災から受けたインパクトで、人々の恐怖感や関心がそういった方面に向くことは自然ですし、建築物は商品という側面もありますので、市場の要請に応答する必要もあるでしょう。
しかしながら、建築家は、ヒステリックな叫び声を上げるのではなく、もっと冷静な態度で、しかし誠実に答え、着実に研究やヴィジョン構築を進めるべきだと思います。ジャーナリズム的、マーケティング的、政治的なものからは、状況対応的なものしか出てこないと考えているので、建築家がこれまで研究してきたり、想定してきたモデルや理想としてきたヴィジョンをコロコロ変えているのではダメなのではないかと思っています。 震災きっかけで、あらたな着目、着想を得て、研究や発明がされること、あるいはこれまで日の目を見なかったヴィジョンにスポットが当たることはもちろん良いことと思います。しかし1年やそこらで革新的な技術が出てくるとは考えにくいです。今それらしく出てくるものは、前からあったものでしょう?
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