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特集:201201 2011-2012年の都市・建築・言葉 アンケート<

木村浩之

●A1
現代日本における建築家の職能について、また現在の産業構造のなかで建築家が果たしうる役割の限界について。
欧州では都市計画のグランドデザインを描くのは建築家であり、土木や都市の専門家がそれに基づいて実物へと落とし込んでいく、という流れができている。一方、日本では建築家とは奇抜な建物や高級デザインマンションを設計する人、というイメージが一部定着してしまった。しかし、建築家こそが「想定」制定のための価値体系と空間イメージを、つまりはヴィジョンを創出するチームの中核としての役割を担うべきなのではないか? また担うよう期待されるべきなのではないか? すべての復興活動に見習い、できることから始めなければ。建築の力を信じているから。

●A2
個人的なものが多くなりますが、

ジェフリー・バワの《ルヌガンガ》(スリランカ)(1月)

念願の訪問・滞在がかなう。さまざまな時空間のものが一同に介し、融合調和している。ひとつの美学の押し付けがましさからの開放。至福。

東日本大震災(3月)

「想定外」(3月)

リスクマネジメントについてだけでなく、自分の職業・生活において想定とは何か、想定内と想定外の境界線はどこにあるのかを、それぞれが考えたことと思う。

艾未未の中国当局による拘束(4月)

本人はつらかっただろうが、これをとおして多くの人が彼の作品だけでなくその背後にある中国の社会と国家にも目を向けることになった。開放を求める行動・言動が世界各地で同時的に見られたことも印象的だった。アートがどれだけ社会的でありえるかを示している。

ディーナー&ディーナー作品集『Diener & Diener』の出版(6月)

10年がかりで準備したものがついに。

「ジャスミン革命」「アラブの春」

ソーシャルメディアの効用があったのはもちろんだが、最終的には人々が物理的に集まることが力となり意味となるということを再度証明した。広場という都市機能が民主化革命の武器となったと言えないだろうか。

『Diener & Diener』(Phaidon Press)


●A3

すべての震災復興プロジェクト

多くの人が言っているように、被災地だけでなく、日本全体の一致団結と構造改革が必要。都市環境とは何か、自分たちは何を期待し、どのように次世代へと引き継いでいきたいのか。認識と「想定」づくりを忘れてはならない。そして、それぞれの土地性の復権も。

オラファー・エリアソンによる奨学金制度

ベルリン芸術大学で「空間実験研究所」を主宰するオラファー・エリアソンが、2012年4月より現役の政治家1名に対し6カ月の奨学金を与えコースを履修させるという。「社会的貢献としての芸術と政治が、日常的時間と空間の共有を通じ、それぞれの創造的思考と手法を比較検討する」のが目的だそう。結果がなんらかのかたちで報告されるのかは不明だが、引き続きエリアソンの活動に注目したい。

「ジェフ・クーンズ」展(バイエラー財団美術館・バーゼル)

ヴェルサイユ宮殿での展覧会も逃しており、まとまった作品群を見たことがないため。バーゼルではそのほかにも、ボナール展、ルノワール展、ドガ展と大型展覧会が目白押し。

バーゼル市立美術館コレクションの全作品オンラインカタログ化プロジェクト

6,000点もの作品群をすべてデータ化し公開するという前代未聞のプロジェクト。開かれたコレクションとはどういうものか体験してみたい。

ヘルツォーグ&デ・ムーロン設計の《ロシュ・タワー》

バーゼルで最も高い建物となる。竣工はまだ先となるが、工事中の躯体が小都市の景観の変化を巻き起こすだろう。

自分が担当している中国・上海の物件が着工!


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