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特集:201201 2011-2012年の都市・建築・言葉 アンケート<

暮沢剛巳

暮沢剛巳 ●A1
今回の震災では多くの人が被災した一方、多くの人が被災を免れた。
両者が明暗を分けた原因は偶然以外の何ものでもないし、人の生死が偶然によって左右されることをこれほど痛切に感じさせられたことはなかった。
自分のなかで、震災以前と以後では「死」や「喪」についてのとらえ方が変わったことは間違いないし、新たなとらえ方に基づく成果をいずれ発表できればと思っている。

●A2

開沼博『「フクシマ」論』

ほかにも複数の方が挙げられると思うが、今年も最も印象に残った1冊と言えばやはりコレ。1とはまったく違う理由で「偶然」の意味について考えさせられた。

開沼博『「フクシマ」論 原子力ムラはなぜ生まれたのか』(青土社、2011.6)

越澤明『後藤新平』・筒井清忠『帝都復興の時代』

今回の震災を関東大震災と関連付ける試みが少なくないなかで、強く印象に残ったのが、奇しくも後藤新平を取り上げたこの2冊。両者の後藤のとらえ方はまったく異なっているが、その振幅の大きさからも後藤という人物の大きさを感じさせられた。
余談だが、10月末にメッスのポンピドゥーセンター分館を訪れた際、その道すがら「FUKUSHIMA」という名の日本料理店を目にして驚いた。あれはいったいなんだったのだろうといまだに当惑している。

越澤明『後藤新平 大震災と帝都復興』(筑摩書房、2011.11)/筒井清忠『帝都復興の時代 関東大震災以後』(中央公論新社、2011.11)


日本料理店「FUKUSHIMA」[筆者撮影]

●A3
現在抱えている仕事で手いっぱいで来年以降のことまで考える余裕はないが、今回の震災を経験した自分が果たして今までと同様に「廃墟」に美を見出せるのかという点で、春に東京で開催予定のユベール・ロベール展は気になっている。
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