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特集:201101 2010-2011年の都市・建築・言葉 アンケート<

長谷川豪

A1
●『建築と日常』No.1「特集=物語の建築」(編集・発行: 長島明夫、2010)
● 佐々木中『切りとれ、あの祈る手を』(河出書房新社、2010)


ものをつくるときに自分をどこに位置づけたらいいかということを考える。それは単に「いま」を追いかけることではないし、また昔に還るということでもけっしてない。同世代の人がつくったこの2冊からそのような思いを新たにした。『建築と日常』は個人誌の創刊号でその内容はかなり濃いが、なかでも大辻邸のドキュメント再録と夫人へのインタヴューには感銘を受けた。この名作住宅の夢のような物語をいまどのように受け止めるべきか考えさせられる。次号にも期待したい。佐々木中『切りとれ、あの祈る手を』は、文学の奇蹟に賭ける筆者のほとんど執念のようなものに圧倒される。特に最終章での語りは、それでもなぜ僕たちはつくるのかという迷いに対し、力強く背中を押してくれる。

『建築と日常』No.1/佐々木中『切りとれ、あの祈る手を』

A2
● 坂本一成『建築に内在する言葉』(TOTO出版、2011)


作品と言説の両方で一貫して緻密な仕事を続けてきた建築家による刊行されたばかりの論文集。パラーディオの『建築四書』に触れて以来、いつか建築論を著わしたいと思っていたという。興味深い意匠論が並ぶなか、とくに80年代に書かれた建築の図像性、かたちの意味の問題については、過剰なかたちや表現が旺盛するいま再考されるべきタイミングではないか。なかでも個人的には、祖型=アーキタイプの議論について改めて考えてみたいと思っている。

坂本一成『建築に内在する言葉』

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