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特集:201101 2010-2011年の都市・建築・言葉 アンケート<

吉村靖孝

● A1
申し訳ないが自作について語りたい。年末に開催した吉村靖孝「CCハウス」展についてである。いや、「自作について」とは言ったものの「CCハウス」の目論見は、作品と非作品を架橋することにある。つまりそれは私の作品であって、私の作品ではないのだ。具体的には建築の実施図面一式を「改変可」と明記したうえで販売または配布する。私が書いた図面を、知らない誰かが「似ているけれど違う」建築へと書き換えながら反復する。建築が建築であることを放棄しないままアノニマスな建築に近づく。その一連のプロセスの一部または全部をクリエイティブ・コモンズのライセンスに則り運用することから、名前をCCハウスとしている。「Nowhere resort」や「コンテナ建築」は、建築を市場や流通など謂わば出口の側から見返すことで生まれる新しさに期待したものだが、「CCハウス」はその延長線上にあって、より具体的な成果に結びつけることができるような気がしている。

CCハウス

●A2
中国。そこを工場と見ることにも、市場と見ることにも大きな興味を抱かずにゼロ年代を過ごしたのだが、ここへ来て何かが変わったと感じる。建築作品をつくるための場として成熟したかどうかを問うこととはまったく異なる次元で、中国の建築について問うべき時期が来たように感じる。たとえば、雑な推論かもしれないが、トップダウン型の指示系統が機能する世界であっても、ボトムアップ型のシステムを作動させることができるのではないかという期待がある。いやむしろそういう場所こそボトムアップ型を実装する意味があるのだ、と思う。来年は、中国の社会システムや規模によるダイナミズムが建築を変える可能性について、より具体的に考えはじめたいと思っている。
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