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特集:200912 ゼロ年代の都市・建築・言葉 アンケート<

小林恵吾

ドバイ・中東


2001年の世界貿易センタービル同時多発テロに始まった10年は、いまも建設中の超高層ビル群が立ち並ぶドバイの経済危機によって幕が閉じられようとしている。アメリカ資本主義の物理的イコンがNYで崩れ落ちた9月11日、アメリカ各地で計画中であった大規模建築計画のほとんどが中断または中止に追いやられた。その後はじまったイラク戦争によって原油価格が高騰、ドバイをはじめとする湾岸諸国の急速な発展に繋がる。
高層オフィス群、ホテルやショッピングモール、海岸沿いの住宅地にいたるまでのすべてが、マーケットの成功術に忠実にしたがって完成したユートビアであるとするならば、そのユートピアが現在危機に瀕していることが示唆するのは、この場所に存在しないものの重要性とその再発見であると言えるのではないだろうか。
東京もこの10年間にいくつかの巨大な開発が行なわれた。高層オフィス街、高層マンション、ショッピングモール、映画館、美術館といったコンビニ弁当のセットのような内容が繰り返されるなか、ドバイに存在しないものの価値とはなにか、ということをひとつの物差しとして今後の都市の発展に生かされることを期待したい。

「ドバイ・ショック」という言葉の余韻がいまだ色濃く漂うなか、改めてドバイの衛生写真(計画中プロジェクト合成)を眺めてみる。いまや見慣れてきたこの一枚の画像が意味すること、それはこの10年間を振り返るうえでいくつかの重要な都市のテーマを含んでいると思う。

○同時多発テロ事件後、砂漠に突如として出現した資本主義の結晶体。カジノのないラスベガスから学べること
○NY世界貿易センタービルの倍近くの高さを誇る超高層ビル群や巨大リゾートホテル。大きさと形態に還元された建築と都市の行方
○砂漠地帯の緑地と「サステイナビリティ」の流行が露にする今世紀都市のジレンマ
○ユートピア「ザ・ワールド」と、それを支えるアジア労働者と欧米エクスパットのリアル・ワールド
○グーグル・アースが可能とした都市設計における新たな視点
○世界中に進展する中東デベロッパーによって繰り返される急速都市開発と建築家の生き残りを賭けた死闘
○鮮明な画像(レンダリング)が先行する都市計画における可能性と不確定要素の排除
Nakheel - Plan Dubai, March 2007
URL=http://www.eikongraphia.com/?p=1865

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