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都市の「シェルター」をリサーチするプロジェクト「Shelter Studies」。サンパウロ、カラカス、ボゴタ、ニューヨーク、ジュネーヴ、パリ、ロンドン、イスタンブール……世界の都市を巡り、そこに住まう人々への30のインタヴュー|Shelter Studies is project to research various 'Shelter' by Keisaku Fukuda+Robert Schmidt+Gonzalo Velez. They interview 30 key persons living in vulnerable urban space.|Powered by MT 2.65Syndicate this site

氏名: マルシア・サエコ・ヒラタ
職業: 建築家
国籍: 日系ブラジル
収録日: 2006年10月13日


ヒラタ女史は人間と建築に対して、ヒューマニスティックにアプローチしている。彼女の活動は、建築家の社会的責任に対して自覚的にさせる。彼女はこう問うことから始める。(とりわけサンパウロにおいて)建築家になるとはどういうことなのか。つまり、貧しい社会のために住宅をつくるうえで、なにが社会的問題なのか。建物をデザインしていくうえでの書面計画や物理的/構造的要求といったことの外で、いまだ定義されることのない建築家の責任を彼女が探し続けること、それが私がなによりも重要だと思う。彼女自身の人生と建築のあり方に対するある種の道徳的責任感は、彼女の中に深く刻み込まれている。

まず、どうしてソーシャル・ハウジングに関わっていこうと思ったのですか?
それは私自身の個人的な過去の経験に関係しています。私の家族や先生たちは、私自身の考えをとおして働く方法を示してくれましたし、私は社会的な問題に関心がありました。例えば私の叔母は教師なのですが、彼女は常にどのようにして教えればよいのか、子どもたちに教えるより良い方法はなにかということを考えていました。ですので、私が建築を学ぶことを決めたとき、建築家になるということは、とりわけサンパウロにおいて建築家になるということはどういうことなのかを自問しました。それは簡単な問いではありません。なぜなら、たくさんの問題が存在しているからです。
もし、より良い空間をつくりたいのなら、たんに建築する、あるいはそれ以上のことが必要です。私にとって、たんにデザインすることや、ただ青写真を考えることは難しい。人々がどこに、どのように住んでいて、いかにしてその近隣をより良い空間にしているのか、まずは理解する必要があります。

「外国人」である私たちが変化を起こすために、なにかアドヴァイスはありますか?
これは、私が現在までやってきた研究のなかで気付くようになった考え方なのですが、2つのレベルで考えない限り問題を解決するのは不可能であると思います。2つのレヴェルとは、ローカル・レヴェル、そしてグローバル・レヴェルです。この2つのレヴェルは、常に相互に影響しあっているものなのです。
例えば、靴をつくるために子どもを使っている国際的な企業について考えてみましょう。ナイキのディレクターの話によれば、だれが靴をつくっているかは問題ではなく、靴メーカーにとっては、(靴を履けないような)貧しい環境にある子どもたちの人生こそが、彼らの関心事だと言うのです。この話をハウジングに引き寄せて考えてみた場合、建物だけでなく、そこに住む人々についても考えるということなのです。どのようにして、その場所に快適に暮らしていけるのか、いかにして仕事を手にして、健康に暮らしていくためのシステムを獲得し、映画館に映画を見に行き、英語のクラスを受講するのかと。
たとえ人類学者であれ、社会学者であれ、首相であれ、政府の人間であれ、普通の人たちの置かれている環境を理解しない限り、そうした人々の問題に応えることは難しいでしょう。
今、あなたたち2人はここに居て、私たちが考えていることを広げ、なにが起きているのかということをより理解することができるでしょう。深く理解するために、あなたたちの調査は十分ではないと思います。なぜなら、彼らを本当に理解したいのであれば、彼らと共に働く必要があるからです。彼らは、私たちの知らない多くの問題を抱えています。例えば、政府は労働者がより良い仕事を得ることができるように、いくつかの訓練の機会を提供していますが、その訓練を受けに行くために乗り物にのるお金がなければ、その訓練自体を受けることは不可能でしょう。彼らはバスや地下鉄に乗るお金を持っておらず、すべてのことは、彼らが住む場所から遠いところで行なわれているのです。訓練の機会を提供することは完璧な提案のように感じるかもしれませんが、実際には機能しないでしょう。地元の人々のことを考えずして、問題を解決することはできません。アドヴァイスがあるとすれば、ローカル・レヴェルの問題を扱うことなく、グローバルな問題を解決することはできないということです。私たちは、ローカル・レヴェルから始めるべきなんです。