パリ、近代から現代へ
IGARASHI Taro Photo Archives 48


R・ロペス、M・ルビィ、M・オレイ《CAF(家族手当金庫)》
Raymond Lopes, Marcel Reby, Michel Holley, Caisse centrale d'Allocations Familiales, 1959
18, rue Viala, Paris 15e, France

レイモン・ロペスらによる《CAF》は、1950年代の金字塔といえる。まず20世紀前半パリでほとんど建てられることのなかった鉄骨建築の系譜を復活させた。行政施設として当時最大の規模の建物であった(25000平米)。半透明のポリエステルとガラスを組み合わせたファサードパネルが開発され、熱損失を低下させ、カーテンウォールの重さを極度に軽減させた。パネルの重さは1平方メートルあたり7kgであり、それらは屋根部分の鉄骨からまとめて吊るされた。これは当時ヨーロッパで最大のカーテンウォールだったという。現場はすべて乾式工法で、完全に工業化・プレファブ化されていた。アメリカの技術にヒントを得た、これら当時最新の技術は、すべてロペスの事務所の中で考案されたという(ロペスは長い間アメリカにいた)。

建築的な革新性に加え、《CAF》は都市計画的な革新性も持っていた。建物は通りに面してではなく、太陽との関係で、南北軸に沿って建てられた。ロペスはパリの街区を新しい規範の元に再編成する可能性を考えていたが、パリの新しいスケールをはらんだ《CAF》は、その子孫をほとんど残すことなく、永遠に50年代のイコンとなった。歴史がロペスの方向に傾いたなら、今のパリはまったく別のものになっていたはずである。

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